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橋本で自然農・古民家暮らし~菊池さん夫婦生き生き
国の「日本音風景100選・杉尾の巨石」があることで名高い山里、和歌山県橋本市杉尾175の古民家に都市部から移住、無農薬・無肥料の「自然農」に取り組んでいる夫婦がいる。菊池均(きくち・ひとし)さん(55)、陽子(ようこ)さん(39)で、夫婦は「大自然と調和しながら、安全安心な野菜をつくり、未来の子供たちの幸せにつなげたい」と、連日、汗を輝かせている。
「杉尾の巨石」は、地元・明王寺の635段の階段を登った山上にあり、巨石の穴に耳を当てれば、紀ノ川の水音が聴こえる。ここは修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ)の修行地ともされ、周辺には小さな棚田が幾つも広がっている。
もともと「自然農」の主役は陽子さんで、陽子さんは東京在住の平成17年(2004)から3年間、自然農法家の川口由一(かわぐち・よしかず)さんに師事。毎月1回、東京から奈良県桜井市の田畑へ通って「自然農」の基礎を学んだ。
均さんは滋賀県野洲市で、会社員兼農業を営んでいたが、平成22年(2010)、陽子さんと結婚後は橋本市御幸辻に住み、同市杉尾などの耕作放棄地を購入したり、借りたりして、陽子さんとともに「自然農」に挑んだ。
今年2月には築150年の杉尾の古民家(木造平屋)を購入・移住。母屋の隣には、珍しい屋根の穀物蔵や古い納屋もある。今は長男・眞明(まさや)ちゃん(3つ)も誕生し、成長過程で、育児にも忙しい。
現在、耕作面積は約4000平方メートル。夫婦は30年以上も手つかずで、雑木や雑草に覆われていた棚田を必死で開墾。すべて自然農・在来種で、米や古代米、小麦を栽培してきた。
野菜は、春は春菊、レタス、赤空豆、泉州玉ねぎ、夏はマイクロトマト、加茂茄子、紫ししとう、枝豆、秋は勝間かぼちゃ、さつまいも、じゃがいも、落花生、冬は阿波大根、金時人参、天王寺かぶ、みやま小かぶ、大浦太ごぼう、里芋いも、菊芋など、計100種類以上にのぼる。
菊池さん夫婦は、収穫した農作物を、天日干しの香り高い「古代米」(黒米=135グラム入り、300円)、出汁も美味しい「切干大根」(50グラム入り、250円)、無農薬の地に自生の「乾燥わらび」(25グラム入り、300円)などに加工、袋入り、瓶詰にして商品化。
毎週木曜日と日曜日の午前11時~午後4時、自宅で出品販売し、季節野菜についても並べたり、近くの田畑で販売したり。同じ日時には、「2日前の完全予約制」で、季節野菜がメインの「カフェ」もオープン。自然農法の米や野菜、自家製の味噌、柿で仕込んだ酢、梅酢などを使った「ベジタリアンメニュー」の食事を提供している。
均さんは「化粧品開発の仕事で、橋本市を訪れた際、自然豊かな橋本での農業生活を考え、その思いが実現しました」と、眞明ちゃんを抱いたまま農作業。陽子さんは「この山では、森・水・大地・草・鳥・虫・微生物・・・すべてが〝ひとつらなりの命〟です。農薬も肥料も、この〝ひとつらなりの命〟の地球を悪くします。美しい自然を未来の子供たちへの贈り物にしたいです」と、自然農の大切さを語った。
季節野菜や農作物の加工品購入、カフェ予約などの問い合わせは、菊池陽子さん(電話=0736・32・4578)。詳細はホームページ(http//kusati.jimdo.com)。
写真(上、中)は古民家の自宅裏の畑で農作業する菊池さん夫婦と長男・眞明ちゃん。写真(下)はおいしい農産物の加工品を披露する菊池陽子さん。