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橋本の山峡の温泉、関西の奥座敷に。「山男」上西さん奔走。温泉施設相談役・上西進さん(73)(橋本市中下)

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「五光の滝」の前で上西さん
    「五光の滝」の前で上西さん
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「五光の滝」の前で上西さん
    「玉川峡」で水流の音に耳を澄ます上西さん
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「やどり温泉 いやしの湯」建設現場を見る上西さん
    「やどり温泉 いやしの湯」建設現場を見る上西さん

早春の水がまぶしい。水流は、ときには岩に砕け、ときには淀み、ときには滝となる。ここは和歌山県橋本市北宿(きたやどり)、高野山南麓(ろく)の峡谷「紀伊丹生川」だ。水流があまりにも美しいことから、通称「玉川」と呼ばれる。「この自然こそが、わたしの古里です。都会の人々に、この素晴らしさを満喫してほしい」と切り出す。

玉川そばの山家で生まれ、玉川の水を産湯につかい、玉川わきで5人兄弟の長男として育った。小学校へは約5キロも歩いて通学。途中、弁当はかならず全部たいらげたし、近道するには、木々を猿のように渡った。山中ではもちろん、マムシやイノシシ、キジなどの禽獣(きんじゅう)と、よく出くわしたが、「ちっとも怖くない。全部、食べ物に見えて、美味(うま)そうに見えた」と、ごっくり、喉仏が動く。また、山菜とりにきた和歌山市の女性が、山中でマムシに踝(くるぶし)付近をかまれた際は、いぶかるその仲間たちの目の前で、紐で足を縛り、血を吸い出して病院に搬送。一命を救ったこともある。山を歩くときは、木の棒で作った槍(やり)を持つ。「万が一、熊と出会ったら、ぐっとにらみつけ、襲ってきたら、開けた口中めがけて一突き。身を守る」と、豪快に笑う。

山中には、イノシシやシカ、ウサギが走り、オナガドリやキジ、ヤマドリが飛び交う。渓流ではアユやアマゴがはねる。山路は行くところ、春はフキノトウやタラメ、夏はタケノコやヤマイチゴ、秋はカキやマツタケ、冬はクリやクルミが豊富だ。こんな環境の中で、狩猟は祖父の亀三郎さんの後について歩くうちに覚え、料理は祖母のハルエさんの手伝いをするうちに身についた。「祖父と一緒に、獣道(けものみち)にワナを仕掛けて、見事、ウサギでもかかろうものなら、躍り上がって喜んだものです」と言い、「祖母からは『鳥は空をとぶので胸肉が、魚は泳ぐので背肉がうまい。ありがたくいただかなければ、罰が当たりますよ』と教わった」と述懐した。

さて、現在、この峡谷に、新しい温泉施設建設の槌音(つちおと)が響いている。橋本市は今年10月ごろ、市設民営「やどり温泉 いやしの湯」を新築オープンさせる予定で、温泉棟や本館(食堂兼研修室)、4棟のコテージ(宿泊OK)などを建設中だ

そもそもこの話、元をたどれば40数年前にさかのぼる。玉川には昔から硫黄が白い帯状に流れていた。高野山の井戸掘り職人の頭に、「ひょっとしたら、地底に『お宝』があるのでは」とひらめいた。1967年、上西さんは、この職人らとともに北岸を掘削したところ、地下540メートル付近から27度の温泉が湧き出した。ここに着目したのは橋本市。「青少年の課外活動に最適」と、72年に市設民営「やどり青少年旅行村・宿り温泉」を建設。運営を任された上西さんら地元の人たちの頑張りで、「アユ・アマゴ釣りは玉川、温泉はやどり」と、京阪神方面でも評判になった。最近では毎年約4000人が訪れる盛況ぶりだったが、温泉の湧出量が、当初の毎分20リットルから、わずか6リットルにまで激減した。このままでは、やがて「閑古鳥」が鳴き、ついには「閉鎖」に追い込まれる。そう心配した上西さんらの要望で、2007年8月、木下善之市長が「湯量を増やす」と宣言。早速、近くを掘削したところ、地下1300メートル付近から、30・4度、毎分90リットルの温泉が湧き出した。そこで、これまでの老朽施設を新施設に建て替えることとなったのだ。JR南海橋本駅から温泉への国道371号は、狭くてドライバーに不評なので、カーブ付近の岩盤を削って拡幅。周辺の山々にはモミジやケヤキを植えて、「借景」をよくする。上西さんは、その現場に立ち会い、連日、大忙しだ。「お湯はナトリウム塩化物温泉なので、よくぬくもり、神経痛や筋肉痛、慢性消化器病、慢性皮膚病などに効きます」と自慢。さらに「こられた人たちが、山歩きを楽しめるよう、今、6つのハイキングコースを考案中です」と説明。これも自身の足で、一歩一歩、確認している。

一方、「温泉・再出発」をにらんで、「玉川周辺の観光マップ」も製作中。すでに過去10年間、玉川流域を広範囲に踏査ずみ。先祖代々伝わる岩や滝、淵、谷、橋、神社など、約100か所の場所や名前を確認し、それを手書きで原図にした。これもすべて自分の足で確かめた綿密な調査で、玉川の源流は高野山、摩尼山など1000メートル級の山4か所。総延長約35キロメートルで紀ノ川にそそぐ。「五光の滝」は瀑布(ばくふ)が荘厳で、昔の修行僧や山伏の行場。「鰻(うなぎ)の背登り」と呼ばれる滝は、ウナギが背びれを使ってのぼるような小滝が続いているなどと、これまでほとんど知られていなかった歴史ロマンを克明に記した。今、原図を業者に渡し、製作を依頼。美しいカラー刷りパンフが、新施設オープン前にできあがる予定だ。「都会の人たちは、排気ガスや雑踏の中で、健康を害し、ストレスがたまると思う。わたしは今後、玉川の語り部となって、皆さんを案内したい。わたしの古里に来ていただき、山川の幸を味わい、いい湯につかり、心を癒してほしい」と話した。

(2011年3月1日、曽我一豊)


更新日:2011年2月1日 火曜日 00:00

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