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年賀状〝伊勢のおかげ横丁〟木版画~巽さん制作中

日本版画院同人の巽好彦さん(77)が、和歌山県橋本市妻の自宅で、平成25年元旦の「年賀状・木版画」制作に取り組んでいる。昭和40年(1965)から「喪中」を除いて毎年制作し、来年の年賀状は53枚目となる。巽さんは「年賀状・木版画を介して、多くの友人知己を得ました。制作には骨が折れますが、皆さんには来年も無病息災でいてほしくて」と話した。
巽さんが現在、制作中の来年の年賀状・木版画は「伊勢のおかげ横丁」の風景。「ここは古い歴史のある門前町で、しかも〝おかげ〟という感謝の言葉をつけた人々の心に打たれます。私もその〝おかげ〟という気持ちで、皆さんの幸せを祈りたい」と、鋭いノミに精魂込めている。
これまで制作してきた年賀状・木版画は、獅子の置物など正月の縁起物や、紀州の粉河寺・山門、東京の根津のはん亭、奈良の当麻寺など、いずれも日本の原風景か、正月のめでたさを感じさせる静物の絵柄で3~4色刷り。毎年歳末には、約1か月がかりで構想を練り、制作し、刷り上げる。今回も150枚以上を刷り上げることになりそう。
巽さんの年賀状・木版画には、それにまつわる様々な思い出話がある。例えば、結婚1年目の昭和39年、夫婦で白馬岳に登山した際、偶然知り合った福井市の大学生Aさんが、夫婦の写真を郵送してくれた。巽さんは翌40年元旦の年賀状を送り、それから毎年、Aさんと年賀状のやりとりが続いている。
Aさんは某銀行大阪支店長を務め今春、和歌山を訪れた際、巽さん宅に立ち寄り一緒に食事。巽さんが車で奈良・明日香の石舞台などを案内。JR・大和高田駅まで送った。
後日、Aさんから「子ら駆くる藤原京址水温む」「かげろうや以外と低き大和三山」などの俳句を記した手紙が届いている。
また、巽さんが書籍購入で世話になった兵庫県西宮市のBさんとも、永らく年賀状を交換。日本版画院で新人賞を受賞した昭和64年には、年賀状に茶碗の見事な水彩画を描いて、「巽さん新人賞お目出とう。大拍手です」と祝福してくれた。後日、たまたま大阪市内での展覧会で、巽さんの作品を見て感激してくれたり、一緒に秋刀魚を食べ、奈良・栄山寺を訪れたりしたことも。
一方、奈良の〝吉野葛の老舗〟のたたずまいが、あまりにも立派なので、平成9年元旦の年賀状・木版画に彫、老舗に送ったら、翌年、その老舗は巽さんの木版画をそのまま年賀状に印刷し、巽さん方に郵送してきたので、びっくりしたというエピソードもある。
巽さんは「たかが年賀状、されど年賀状。年賀状を交わすことで、心の絆ができ、いろんなお付き合いにつながっています。それにしても納得のいく作品を作るには、気力、体力が要ります」と、今年も制作に打ち込んでいる。
写真(上)は年賀状・木版画の制作に取り組む巽さん。写真(中)は年賀状・木版画(左から)「正月の縁起物の置物」と「紀州の粉河寺・山門」。写真(下)は年賀状・木版画(左から)「根津のはん亭」「当麻寺」。


更新日:2012年12月13日 木曜日 10:43

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