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花黄菖蒲、高野山の大松に咲く…野鳥が苗運ぶ?

根本大塔や御影堂など、多くの塔堂が建つ高野山(和歌山県高野町)の檀上伽藍。その根本大塔と御影堂との間に、どれが幹かわらない、3本に分かれた松の大木がある。その分かれた幹の間に、けなげに咲いている花黄菖蒲(はなきしょうぶ)と出会った。
弘法大師の生誕を祝う「青葉まつり」(6月15日)の前夜祭で、高野山在住のオペラ歌手・尾上利香さんが、檀上伽藍で祈りの歌を奉納するという。その写真撮影を頼まれ、いいスポットを見つけようと、伽藍を歩きまわっている時、花黄菖蒲が目にとまった。
こんなところに…なぜ。誰が植えたものか、自然に生育したものかわからないが、「これは珍しいぞ」と一瞬、尾上さんのことを忘れて、菖蒲に見とれていた。時折、伽藍を通り抜ける涼風に、小刻みに揺れる菖蒲の姿が、尾上さんのすき徹るようなソプラノの歌声に、酔っているかのように映り、私は無意識にカメラを向けていた。
今度はビデオカメラで撮りたいと思い、3日後の17日朝、再び伽藍を訪れてみた。しかし、前日の強い雨に打たれたのだろうか。花茎の先端につけた花が萎れ、崩れ落ちそうになっていた。無念だった。
翌日、医師で植物研究家の田中治さん(同県橋本市隅田町)に、花黄菖蒲の写真を見てもらって、ことの次第を話してみた。すると、田中先生は「これは野鳥が、松の湿った土のある場所へ、どこからか苗をくわえてきたものでしょう」と、教えてくれた。自然、そして命のふしぎ。ビデオカメラでは撮れなかったものの、田中さんのお話を聴いた後、私にとって、花黄菖蒲の写真は、一層、貴重なものとなった。
写真(上)(中)は松の幹の分かれ目に咲いた花黄菖蒲。写真(下)は高野山・檀上伽藍にある松の大木。
                    (フォトライター 北森久雄)

更新日:2012年6月21日 木曜日 09:09

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