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玉川峡〝五光の滝〟荒らされる~犯人、手すり壊す
和歌山県橋本市北宿の清流・玉川峡(紀伊丹生川)にある名勝「五光の滝」の階段の手すり2ヶ所が、何者かに壊されていることがわかった。ここには毎年、県外から得体の知れない祈祷師や、僧侶がやってきて、焚き火などしたうえ消さずに帰るため、橋本消防署は「火の用心」の看板を立てている。
地元の温泉宿泊施設の相談役で、玉川漁業協同組合長の上西進さん(73)は、「五光の滝は、玉川峡の中でも、荘厳で景色のいいところ。勝手なことは許さない」と、監視を強めている。
「五光の滝」は、来春の完成を目指して建設中の、市設民営「やどり温泉いやしの湯」のすぐ西側。玉川沿いの道路から山上の「五光の滝」まで、約100メートルの階段が続き、滝に向かう階段の右側は山の斜面、左側は玉川に注ぐ谷川で、手すりは左側に直径約7センチのヒノキ丸太で作られ、ハイカーらの転落を防いでいる。
最近、上西さんが見回り中、手すりの2ヶ所で、ヒノキの丸太が真ん中からぽっきりと折られ、丸太は両端をとめたボルトで、かろうじてぶら下がっていた。この階段や手すりは、2009年に県立自然公園観光事業(補助金500万円)で、材木や石材を購入して、地元住民らがボランティアで築造した。上西さんは壊された部分の補修を県に依頼した。
地元住民の話によると、「五光の滝」には毎年2、3回、祈祷師1人や僧侶3人が別々に訪れ、祈祷師は長くて太いローソクに火をともして呪文を唱え、僧侶は焚き火を囲んで読経して帰る。火をそのままにして帰るので、消防署が注意しているが、いっこうに耳を傾けないという。今回の〝手すり損壊事件〟は、この人たちの仕業という訳ではないが、何者かが焚き火をするため、ヒノキ丸太を壊して取ろうとして、失敗したらしい。
「五光の滝」は、約1000年前には、高野山の修行僧や修験者が、滝に打たれて心身を清めたところ。また、1953年(昭和28)の紀州大水害以前は、等身大の石仏5体が祭られ、滝の前には桧皮葺(ひわだぶき)のお堂があって、毎年お盆には、地元住民の盆踊りが、お堂の中で行われていた。今は、大水害で流されるなどして、お堂も石仏もなくなっている。
市設民営「やどり温泉いやしの湯」は、温泉棟や本館(食堂兼研修室)、4棟のコテージ(宿泊OK)などを築造し、来年3月2日に〝近畿の奥座敷〟としてオープンの予定だ。上西さんは「玉川峡も、五光の滝も、すべて人々の癒しの場。この美しい自然を皆さんとともに結束して守りたい」と、環境保全を訴えている。