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空海のお山へズームカー往来~絶景かな笠木の高台

弘法大師(空海)が開いた高野山に至る道、国道370号。和歌山県九度山町の南海九度山駅付近を過ぎると、370号は右に左にとカーブが連続する。かつて和紙の産地として栄えた古沢を過ぎると、やがて険しい山間に民家が点在する笠木の集落が見えてくる。慈尊院の高野政所(九度山)から、高野山へ参詣する際の、休息地だったといわれている笠木。高野山アーカイブス18回目は、ここ笠木から。
 国道沿いの老木の桜を目印に、鋭角になった急坂を300メートルほど登ったところに高野線を広く見渡せる地点がある。鉄道敷設が難工事だったことが、容易に伺える場所でもある。
 紅葉シーズンはむろん、霧が立ち込めたり、雪が降ったりすることなど、気象条件によって景色が大きく変化するので、長時間居座っても飽きないロケーションだ。撮影の場合、あらかじめ撮影位置を決めておき、電車がきたことを知らせるレールのきしむ音が聞こえてきた時点で、カメラを構えても結構、撮影に間に合い、シャッターも無数に切れる。
 写真は3枚とも笠木から見た笠木鉄橋と、その付近の2100系ズームカー、新ズームカー2200系。1990年4月に撮影したもの。
 ズームカーの一口メモ。ズームとは航空用語で急角度上昇のこと。高野下~極楽橋間は、最大50‰(パーミル=1000メートル進んで50メートル上がる、または下がること)の急勾配と、半径100メートルの急カーブが連続する。このレールを低速度で大きな牽引力を発揮、平坦線では高速度運転が可能な車両であることから、ズームカーと名づけられたという。
 紹介した笠木からの展望は、鉄道写真絶好の撮影スポットだが、この道は地元の人たちの生活道路。車利用の場合は、普通車でも通れる道幅になっているが、急坂なので運転には十分な注意が必要で、とくに駐車の際は、地元の人たちに迷惑をかけないことがルール。
                           (フォトライター 北森久雄)


更新日:2011年8月26日 金曜日 22:21

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