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織物干しやアユ釣り~町家は小京都の風情

和歌山県橋本市の「橋本の紀ノ川鉄橋三景」(前回)に続いて16回目の高野線アーカイブスは、鉄橋をゆっくりと渡る電車の車窓からも見える風景三景を選んでみた。
写真上は、紀ノ川の河原に干すシール織物で、1970年(昭和45)12月の撮影。織物業界の景気がよかったことを象徴するかのように、天気のよい日には、織物の町高野口などから染めあげたばかりの紅や青のシール織物が、トラックに積んで河原に運び込まれ、一枚一枚丁寧に並べて干していく。シールの数が増していくに従って、あでやかな模様が浮かび上がり、紀ノ川の風物詩の一つにもなっていた。
この光景を日本のふるさとを描く画家で知られる原田泰治さんが「紀の川」の題名で朝日新聞日曜版(82年)にカラーで大きく掲載され、地元の人たちを驚かせたことがある。
写真中は、40年ほど前に写した紀ノ川でのアユ釣りのひとこま。紀ノ川のアユは有名で、解禁なると大勢の釣り人が集まり、川の真ん中にまで入って長い竿を差し出していた。おいしいアユを食べる機会の多い時代でもあった。
写真下は84年(昭和59)の春の撮影。橋本市橋本2丁目、国道24号沿いに並ぶ築約260年といわれる入母屋造りや切妻造りの建物。紀ノ川南岸から眺めると、テラスを張り出した独特の趣の家などが見られ、まるで小京都を思わせるような風情があった。
この風光明媚な鉄橋付近には、橋本やその周辺の画家らが好んで訪れ、スケッチしたり、キャンバスに風景画を描く姿があった。
(フォトライター 北森久雄)


更新日:2011年8月3日 水曜日 00:25

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