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巽好彦氏の板画は超一級♪日本板画院・下澤木鉢郎賞

世界的な板画の巨匠・棟方志功(むなかた・しこう=1903~1975)が創設した日本板画院・委員の巽好彦(たつみ・よしひこ)さん(84)=和歌山県橋本市妻=の木板画「東京今昔物語」が、第69回板院展で超一級の「下澤木鉢郎(しもざわ・きはちろう)賞」を受賞した。巽さんは「棟方先生に出会えたこと、板画院の先生方からご指導いただいたお陰です」と喜びを語った。
巽さんは50歳で日本板画院に入会、38回展で初入選、40回展で新人賞を受賞。43回展で同人、一般社団法人日本板画院となった63回展で委員に就任。郷土・橋本市でも、その板画活動が讃えられ平成22年(2010)文化賞を受賞。尊崇する棟方の板画に打ち込む姿に草野心平(くさの・しんぺい)の詩を加えた、自作の木板画を今も大切に保管している。
今回受賞した「東京今昔物語」は、東京・根津神社近くの大正ロマン溢れる2階建て家屋。屋根は瓦葺き、周囲は板壁、1階は元「畳屋」らしく、幕末・明治の趣(おもむき)を残し、周辺の近代的ビルとの対比が時の流れを感じさせる。
下澤木鉢郎(1901~1986)は昭和27年(1952)、棟方創設の日本板画院に参加した、いわば棟方の同朋。地方風俗・風景中心の作品は、若い頃から愛した俳句・絵画の心が表れ、昭和57年(1982)には板画制作と普及活動で紺綬褒章を受章。
今回、巽さんが受賞した「下澤木鉢郎賞」は「棟方志功賞」に次ぐ超一級の賞である。
巽さんは30歳代の頃、大阪のデパートで棟方の木版画〝観音様のような女性〟に出会い、目録を買うと度の強いメガネをかけた棟方は「むなーっ」と叫んで本の裏に「棟」の一字をサイン。その作品の女人美と棟方の気迫に感服し、板画の世界に入った。巽さんの心の原点は「紀伊名所図会」や広重の「東道五十三次」にあり、描写対象はふる里の風景である。
例えば、紀ノ川畔の三軒茶屋の灯篭(とうろう)などの「東家の渡し場跡」、平安時代の創建とされる「東家の妙楽寺」などのほか、担ぎ屋台(だんじり)と人物画象鏡を表した隅田八幡神社の「ふるさとの宝」、舟の形の珍しい「川原町の舟楽車(ふなだんじり)」、空に花火の「紀の川祭」など、ふる里特有の雰囲気を彫ってきた。
それを土台に、東京など県外でも、懐かしい風物を活写。富山県福光町の「麹屋(こうじや)」に飾られたその建物の板画については、「鶴瓶の家族に乾杯」(NHK)でも、話題になっている。
巽さんは「有難いことに棟方先生の気迫と眼差しが、私の原動力となりました。さらに日本板画院・和歌山支部の先生方から、あなたの作品が、どの部屋のどの壁に掛けられるか、完成作品にどう表題をつけるか、大切な事が山程あると教わりました」と感謝し、「受賞を励みに頑張ります」と誓っていた。
写真(上)は今回の受賞作「東京今昔物語」。写真(中)は下澤木鉢郎賞を受賞した巽好彦さん=自宅で。写真(下)は巽さん作の棟方志功の姿と草野心平の詩の木板画。


更新日:2019年6月26日 水曜日 00:00

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