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巽さんの〝木版画入り名刺〟好評…市職員ら活用
日本版画院同人の巽好彦さん(77)=和歌山県橋本市妻=制作の〝郷土の風景作品〟を印刷した名刺が、橋本市職員の間で使われ、巽さんは「職員方が各地の方々と名刺交換するたびに、郷土の町並みや祭り風景を見ていただける」と喜んでいる。
名刺に印刷されているのは、豪快に境内を練る「隅田八幡神社の担ぎだんじり」、胡弓や三味線、太鼓で囃(はや)す「川原町の舟樂車(ふなだんじり)」、紀伊名所図会にもある「四つ辻の道しるべ(東家の旧高野、大和街道の交差地点)」、橋本の繁栄を築いた「応其上人の応其寺(おうごじ)」、国の重文「利生護国寺」など約10種類。
いずれも名刺の上部に印刷し、下部の余白部分に職員の肩書き、氏名、電話番号などを印刷するようにしている。1ケース(100枚入り)500円。
これは平成12年(2000)、橋本市観光協会(事務局=橋本市産業振興課・現商工観光課)が、郷土の素晴らしさを、広く知ってもらおうと企画。依頼された巽さんは、「郷土のためになるなら」と、作品の使用を快諾した。以来、多くの職員が、巽さんの木版画入り名刺を使用。今年4月以降の名刺注文数は39ケースにのぼり、12年後の今も、好評を博している。
巽さんは棟方志功・創設の日本板画院同人のほか、木版画・刀の会や紀北文人会会員。とくに、江戸時代の風景を描いた広重の浮世絵「東海道五十三次」と、古里・橋本周辺も描いた「紀伊名所図会」に魅かれ、それらの絵に類似した橋本の古い町並みに着目。丹念に作品に仕上げてきた。
巽さんは「橋本の古い町並みが、市街地再開発事業で、消えていくのは残念です。しかし、沢山の名刺に木版画が印刷され、郷土の風景が伝承されるのは、有難いことだと思っています」と話した。
問い合わせは、橋本市商工観光課(0736・33・6106)。
写真(上)は巽さんの木版画が印刷された名刺(下部の余白部分に氏名などを印刷)。写真(中)は作品を披露する巽さん。写真(下)は巽さんの作品「隅田八幡神社の担ぎ山車」。