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かがやく薫炉、金剛峯寺へ奉納♪秋田の林美光さん
秋田市の金属工芸作家・林美光(はやし・びこう)さん(81)が11月8日、自作の金銀銅杢目金・薫炉(もくめがね・くんろ)「金剛峯(こんごうぶ)」を、和歌山県高野町の高野山真言宗総本山・金剛峯寺に奉納した。この「金剛峯」は、秋田地方の江戸時代初期の技法を再現した伝統的な逸品で、添田隆昭(そえだ・りゅうしょう)宗務総長は、「誠にありがたい。高野山霊宝館で永久保存し、機会を見て一般公開したい」と話した。
薫炉とは香炉(こうろ)のことで、仏様に香を奉げる仏教の必需品。この薫炉「金剛峯」は、香をたく器とその蓋(ふた)、台座で構築。高さ約35センチ、幅約36センチ、奥行き約26センチ、重さ約20キロで、器は杢目金(もくめがね)と赤銅(しゃくどう)で不動明王の力強さ、蓋と台座は金銀細工で草花をそれぞれ表現している。
その技法は金、銀、銅、赤銅、黒銅の5種類の金属板を数十枚合わせて、約1100度の高熱で密着させ、彫りを入れたり、叩いて鍛えるなどして、杢目(もくめ)を浮かび上がらせる。
これは江戸時代初期の秋田藩お抱え金工師・正阿弥伝兵衛(しょうあみ・でんべえ)考案とされる技術で、刀の鍔(つば)や柄(つか)に使われたが、幕末には途絶えていた。
林さんは日本工芸会会員、秋田県美術工芸協会会長、佐竹歴史文化博物館代表。10歳の頃から、彫鍛金師(ちょうたんきんし)の父に師事。若い頃に正阿弥・作品を見て感動。その技法を研究し、60歳代半ばで再現した。今回の薫炉「金剛峯」は同技法の最大作品という。
林さんは平成27年(2015)に香炉「華厳(けごん)」を奈良・東大寺へ奉納。後日、同寺から「添田宗務総長が作品を絶賛していた」と聞き、高野山・金剛峯寺への奉納を決意、精魂込めて作り上げた。
林さんは「私は地元の高野山真言宗・宝性寺(ほうじょうじ)檀信徒(相談役)でもあり、私の薫炉が添田宗務総長とのご縁で、高野山に永久保存されることは、誠にうれしいです」と話した。
添田宗務総長も「将来、国宝となり得る逸品。高野山霊宝館で大切に保存し、その素晴らしさを永久に伝えたい。今後いい機会をみて、多くの皆様にご覧いただきたい」と喜んでいた。
写真(上)は添田宗務総長=左=に薫炉「金剛峯」目録を奉納する林さん。写真(中)は金剛峯寺に奉納された薫炉「金剛峯」。写真(下)は「金剛峯」の蓋を開けて作品説明する林さん。