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日本画家・千住博さん襖絵奉納へ~高野山金剛峯寺
世界的に活躍中の日本画家・千住博(せんじゅ・ひろし)さん(57)=東京生まれ、米・ニューヨーク在住=が、開創1200年記念の世界遺産・高野山真言宗・金剛峯寺(和歌山県高野町)に襖絵(ふすまえ)を奉納することに決まり、12月17日、同寺で報道陣に発表した。千住さんは「弘法大師・空海の心を感じながら、宇宙を永遠に流れる『滝』を表現して、奉納襖絵としたい」と抱負を語り、添田隆昭(そえだ・りゅうしょう)宗務総長は「千住先生の襖絵が、多くの方々の高野参詣のきっかけになれば」と期待、謝辞を述べた。
千住さんは東京芸術大学美術学部卒業、同大学院博士課程修了。1995年のヴェネツィア・ビエンナーレ絵画部門で代表作「ウォーターフォール」が名誉賞を受賞。世界各地で個展を開き、京都造形芸術大学学長などを経て、現在・東京藝術学舎学舎長。
千住さんは今年10月、高野山・金剛峯寺から本山大主殿内の「囲炉裏(いろり)の間」と「茶の間」の2部屋=計68畳=の襖絵42枚を描くよう提案され、弘法大師・空海の教えた真言密教や、高野山の自然のたたずまいに心打たれ、奉納を決心したという。
千住さんは、ニューヨークのアトリエで襖絵を製作。先ず、岩絵具(いわえのぐ)や膠(にかわ)、和紙など、すべて天然材料をそろえる。イメージが定まると制作活動に入り、2020年頃には完成させて、京都の表具店で表装、奉納したい考え。
この日、千住さんは記者団に対し、「人々は高野山へ〝悩みの解決の糸口に〟来られるのでは」と前置きし、「私にも悩みや苦しみはあります。高野山は法身(ほっしん)の里であり、どこよりも宇宙に近いところです」と説明。そこで「奉納する襖絵は、できれば『滝』を描きたい。流れる時間や重力そのものの『滝』は、まさに宇宙そのものです」と強調。「今回の製作は、私のこれまでの集大成だと思い、命がけで取り組みたい」と誓った。
千住さんは記者会見の後、添田・宗務総長の案内で、「囲炉裏の間」と「茶の間」を巡り、「岩絵具(いわえのぐ)など、すべて天然素材を選び、1000年経っても、絶対に剥落することなく、ご覧いただける襖絵にしたい」「この空間は、雅やかなものではなく、落ちついた水墨画に近い色合いで、宇宙を体得できる『滝』を描きたい」と語った。
千住さんの弟は作曲家・千住明(あきら)さん、妹はヴァイオリニストの千住真理子(まりこ)さん、父は工学博士の千住鎮雄(しずお)さん、母はエッセイストの千住文子(ふみこ)さんで、いずれも著名人。
写真(上)は高野山・金剛峯寺「囲炉裏の間」を訪れた千住博さん=左と説明する添田・宗務総長。写真(中)は日本画製作中の千住博さん=記者発表資料より。写真(下)は金剛峯寺「茶の間」で添田・宗務総長の説明を聞く千住博さん。