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障がい克服♪ピアノ奉納演奏~高野山で見事13人
弘法大師・空海の高野山開創1200年を記念した奉納演奏・第1回障がい者ピアニストによる「天空のしらべコンサート」が、8月22日、和歌山県高野町高野山の高野山大学・松下講堂黎明館(れいめいかん)で開かれた。奉納演奏を聴いた高野山麓の「大石順教尼(おおいし・じゅんきょうに)の館(旧・萱野家)」の萱野正巳(かやの・まさみ)館長は、「皆さん素敵なピアニストばかり。来年は順教尼没後50年なので、紀の川筋でも、皆さんのピアノコンサートを開きたいものです」と希望を話した。
高野山奉納コンサート実行委員会が主催し、高野町、同町教委、同町社会福祉協議会、高野山大学が後援した。壇上のグランドピアノの上方には、弘法大師の肖像画が掲げられ、ろうそく明かりに浮かび上がっている。
初めに実行委を代表して高野山真言宗の添田隆昭(そえだ・りゅうしょう)宗務総長が「私たちは能力が制限されても、別の能力を開花することができる。きょうの皆様の奉納演奏は、神様、仏様もきっと喜んでいます」と述べ、平野嘉也(ひらの・よしや)高野町長も「宗教文化や環境、道徳が大切であり、そのことを私たちは金剛峯寺とともに世界に発信したい」と挨拶した。
この後、ダウン症や自閉症、知的障害などを克服、または闘いながら、音楽に打ち込んでいる支援学校生や卒業生ら13人のピアニストが登場。ショパンの「ノクターン」やベートーベンの「悲愴」、井上陽水の「少年時代」などを次々と演奏し、喝采を浴びていた。
また、人間の平等や人権の大切さを世界に訴えている人気のオペラ歌手・渡辺千賀子(わたなべ・ちかこ)さんが特別ゲスト出演。渡辺さんは「今は学校の成績も、よくできた、できた、もう少し…ということになっていますが、私たちの時代には1から5まであって、1だと…」と笑いながら切り出し、「通信簿」というフォークソング、さらに「人権とは安心して、自信を持ち、自由であること」などと説明したうえで、「権利」という歌を歌った。会場の人たちは、大きく頷いたあと、「素晴らしい」と言って、拍手を送っていた。
「大石順教尼の館」(九度山町)は、高野山で得度した順教尼(本名=よね=1888~1968年)が逗留(とうりゅう)した元・寺院。順教尼は幼い時に両腕を失くし、口に筆をくわえて書画を制作、社会福祉にも大きく貢献。「障がい者の母」として尊崇されている。
萱野館長は「来年の順教尼没後50年には、多くの方々の励みになる記念事業を展開したい。きょうのピアニストの方々の演奏は実に見事で、もしも紀の川筋でコンサートが実現できたら、順教尼もきっと喜んでくれるに違いありません」と明るく語っていた。
写真(上)は弘法大師の肖像画の前で奉納演奏する女性ピアニスト。写真(中)は奉納演奏する男性ピアニスト。写真(下)は特別ゲスト出演した渡辺千賀子さん。