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順教尼も喜ぶ芸術作品♪支援学校生100点ずらり
両腕を失った障害を克服し、口に筆をくわえて書画を描き、「障がい者の心の母」と慕われた大石順教尼(おおいし・じゅんきょうに=本名・よね=1888~1968年)ゆかりの和歌山県九度山町の「大石順教尼の記念館(旧・萱野家)」で、橋本市の「県立きのかわ支援学校・児童生徒作品展」が開かれている。これは順教尼没後50年の特別企画で、萱野正巳(かやの・まさみ)館長は「常設の順教尼の遺作と共に、ぜひ生徒たちの力作をご覧ください」と呼びかけている。11月5日(日)まで。入館無料。
九度山町教育委員会が主催、旧萱野家保存会・大石順教尼かなりや会が協賛。順教尼は大阪・道頓堀生まれ。17才の時、養父の狂乱により、両腕を切り落とされたが、後にカナリアがクチバシでヒナに餌を与えている姿を見て、「両手がなくても、物事はできる」と悟り、書画の道に邁進。高野山で出家・得度した順教尼は、「菩提親」でもあった萱野家に逗留(とうりゅう)、京都・山科の可笑庵(かしょうあん)で、80歳の生涯を閉じるまで、書画の道を究め、身体障害者の社会復帰事業に尽力した。
今回、橋本市の県立きのかわ支援学校の児童・生徒たちが絵画や陶器、木工作品など約100点を出展。会場入口には、平成27年度卒業生が制作、普段は学校玄関に飾っている、笑顔のようなステンドグラス「ウエルカムボード」を置いて心地よく歓迎。
奥には修学旅行で訪れた北海道の風景をキルトで表現した「大空と大地の中で」(縦約0・9メートル、横約1・2メートル)を展示。1針1針に心込めた生徒たちの息遣いが見事にあらわれている。
児童が作った切り絵のような「うみ」は、魚と海の不思議が語られ、「バタフライ」は蝶の羽根が宙をはみ出している。「やさい」は彩色を見るだけで、茄子(なす)胡瓜(きゅうり)を感じる。「とんぼ」はほとんど羽根が透けているが、目玉は2つ、子供のようにかわいい。
このほかTシャツ、タイル製コースター鍋敷き、缶バッチ、デコ石けん、ストラップ、陶芸品、名刺立てなど、いずれも心爽やかな作品ぞろい。
この児童生徒作品展は、町教委が順教尼の思いを伝え、生かそうと企画。萱野館長は「ひたすら仏心を求め、障がい者の社会復帰に尽した順教尼のやさしい心。それを受け継ぎ、誰にも描けない、作れない、児童生徒たちの作品です。ぜひ、ご覧いただきたい」と推奨している。
同館の開館時間は午前10時~午後4時半(入館は同4時まで)。休館は月、火曜日。場所は南海高野線・九度山駅から徒歩7分。問い合わせは旧萱野家(電話=0736・54・2411)。
写真(上)は県立きのかわ支援学校生が制作したキルト作品「大空と大地の中で」。写真(中)は同児童生徒の作品展の風景。写真(下)は改めて海の素晴らしさを感じさせる作品「うみ」。