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空海伝説の和紙・高野紙~児童らに紙漉技術を伝承

弘法大師・空海が約1200年前、和紙作り製法を中国から伝えたとされ、今はその紙漉(かみすき)仕事が途絶えている和歌山県九度山町の高野紙(こうやがみ)――。
11月27日(日本時間)、ユネスコ(国連教育・科学・文化機関)は、埼玉県小川町・東秩父村の細川紙(ほそかわし)などの「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」を無形文化遺産に登録した。
高野紙は江戸時代初期、現在の九度山町から埼玉県小川町に「細川紙」として伝わったという「説」があるが、それを裏付ける証拠は、今のところどこにもない。
ただ、九度山町教委は平成11年4月、後継者難から、消えゆく高野紙の紙漉技術を後世に伝えようと、同町慈尊院に高野紙伝承体験資料館「紙遊苑」を開設。今では多くの小中学生や観光客が「和紙の手漉技術」の体験に訪れている。
そこで、今回の「和紙の無形文化遺産」登録を機会に、高野紙と埼玉県小川町の細川紙との関係や、紙遊苑の取り組みについて取材、紹介することにした。
九度山町教委によると、高野紙は弘仁7年(816)、高野山を開創した弘法大師・空海が、中国から製法を伝えたとされ、山麓の古沢、河根、細川の各地区で、最盛期の大正時代には、約100軒の家々が、紙漉仕事を行っていた。
鎌倉時代初期には、高野山の経典の印刷用紙や経巻の書写用紙に使用。活字印刷が進んだ明治時代以降になると、紙の目が粗いため、出版用紙に使われなくなったが、丈夫な厚紙なので、傘紙、障子紙、合羽(かっぱ)、紙袋、提灯(ちょうちん)などに使用された。昭和30年代以降は、傘に布が使われ、製紙の機械化とともに、衰退の一途をたどり、平成17年頃には、高野紙の紙漉仕事をする人は完全にいなくなったという。
九度山町教委では当時、教育指導員を務めていた松山健(まつやま・けん)さんが、将来、必ず訪れる「高野紙の紙漉技術の消滅」の状況をにらみ、「紀州高野紙伝承体験資料館」の開設を考案。町・町教委は、同町慈尊院749の6の高野山真言宗・勝利寺(しょうりじ)の庫裡を改装して「紙遊苑」を開苑した。
これと並行して、古老から高野紙の紙漉技術を習得してきた松山さんが、紙遊苑の初代苑長に就任。漉舟(すきぶね)や漉桁(すけた)などの紙漉道具を使って、小中学生や観光客に伝統の紙漉を伝えてきた。
紙遊苑は茅葺(かやぶき)屋根の日本建築で、土間には「高野山麓の一角で、大勢の人たちが楮(こうぞ)を蒸し、黒皮をむき、紙を漉き、天日で干す風景と、それを高野山への道すがら、眺める貴族の列を表したジオラマ」を設置。天井からは、同地ゆかりの戦国武将・真田幸村を描いた高野紙製の「九度山の大凧(おおだこ)」などを飾った。
注目されるのは、平成10年頃、小川町から贈呈された、細川紙製の3本のジャンボな「七夕雪洞(たなばたぼんぼり)」が、天井から飾られていること。歴史的な証明はないものの、「細川紙のルーツは高野紙ではないか」という伝説的つながりから、小川町がオープンを控えた「紙遊苑」に寄贈、祝福してくれたものという。
小川町役場・広報によると、細川紙の歴史的・概略について、次のように記している。細川紙は昭和53年(1978)、その技術が国の重要無形文化財に指定された。細川紙は小川紙、武蔵紙とも言われ、正倉院文書には、宝亀5年(774)の記録で「武蔵国紙四百八十張五十管」とあり、承和8年(841)の文献では、新羅系・渡来人(有力者)が、息子2人の租税を合わせて紙二百四十張を前納したとある。これらのことから、細川紙の紙漉技術は、8世紀から9世紀にかけて、渡来人が大陸からもたらしたと推定されている。
その一方で、細川紙は江戸時代初期、高野山麓の細川村で漉かれていた「細川奉書」が、江戸中心部に近い小川町に伝わったとも言われ、そのルーツは謎に包まれている。
今回、この細川紙と岐阜県の本美濃紙(ほんみのし)が、すでに登録済みの島根県・石州半紙(せきしゅうはんし)に加え、ユネスコ無形文化遺産に登録された。
松山さんは「紙漉仕事が途絶えた今、高野紙の登録は無理にしても、すでに高野山麓には高野紙作りの伝承基盤を設けているので、今は多くの小学生が、自らの卒業証書の和紙を作り、観光客も紙漉体験を喜んでくれています」と説明。
九度山町教委の田口勝(たぐち・まさる)教育長も「高野紙については、地元住民から承諾をいただき、平成24年には町教委で『紀州高野紙』という商標登録をしていて、その技術は途切れることなく、次世代に継承していきたい」と話し、小川町などの手漉和紙技術が、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことについては、「とても喜ばしいことです。和紙産業の発展を祈ります」と祝福していた。
なお、紙遊苑の開苑時間は、午前9時~午後4時30分(入苑は同4時まで)。休苑日は毎週月、火曜日(祝日の場合は開苑)と、年末年始(12月28日~1月4日)。入場料は無料。紙漉費(材料費)は、はがき大(3枚1組)=300円(20人以上の団体は250円)、色紙大=300円(同250円)、A3大=400円(同300円)。いずれも事前・予約制。駐車場=階段下にあり=乗用車8台、バス2台程度。駐車無料。
予約・問い合わせ=紙遊苑(電話0736・54・3484)。
写真(上)は紙遊苑で紙漉体験をする子供たち。写真(中)は小川町から贈呈された細川紙製の「七夕雪洞」や、高野紙製の「九度山の真田凧」などを飾った紙遊苑・展示室。写真(下)は昔の紙漉風景を表現したジオラマを見学する児童生徒たち。

更新日:2014年11月28日 金曜日 00:00

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