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雪の鳥居、太鼓橋、楼門~丹生都比売神社
朱塗りの鳥居をくぐると、しめ縄の紙垂(しで)が、さらさら風に鳴っていた。太鼓橋のそばの松葉も、ひょうひょうと風を切っている。半円形の太鼓橋は、5センチ程の積雪で、重々しく、ふだんは美しい陰影を落とす鏡池は、氷に閉ざされていた。
ここは和歌山県かつらぎ町上天野の世界遺産「丹生都比売(にうつひめ)神社」の入り口付近。太鼓橋を渡ったところに、ふたつ目の鳥居があり、その鳥居の向こうに、拝殿を背景にした朱塗りの楼門が、どっしりと丸柱で踏ん張っている。
雪は、本殿の屋根はもちろん、境内や森、灯篭などに、依然、降り積もりつつある。境内の泉水で手を洗い、ハンカチで拭おうとしたら、その屋根から雪がしずり、どさっと冬帽子の上に落ちた。雪には驚かなかったが、その途端、山鳩が2、3羽飛び立ったことに、心地よい驚きを感じた。
読者諸氏に、大晦日と正月の情報を発信したくて、由緒あるこの神社を訪れたのだが、下界では降っていない雪が、この〝天野盆地〟では降り積もっている。川端康成の小説「雪国」ではないが、トンネルを抜けると、まさに雪国だったのである。
神社・社務所の窓口越しi、神職に年末年始の行事予定を尋ねていると、いつも取材に対応してくれる丹生晃市宮司が、中から顔を見せ、「寒いので、お上がり下さい」と言う。温かいストーブのそばの椅子で、温かいコーヒーを頂載しながら、お話しを聴いた。
大晦日には、健康と弥栄を祈る大祓式(おおはらえしき)を行い、正月3が日には、特別参拝や甘酒の無料接待があることなどを、事細かに教えていただいた。ふたたび表に出ると、雪は先刻よりも激しく降っている。
いくらトンネルが出来て、便利になったとはいえ、天野盆地を訪れる人は、この季節、そんなに多くはない。せめて雪の丹生都比売神社の光景を、見てもらわなければと、雪中、写真撮影に走り回ってみた。寒さで鼻の穴が何度もくすぐったくなり、朱塗りの鳥居、朱塗りの楼門が、ことさら朱(あか)く見えてきた。
冬帽の鳥居をくぐり楼門へ
くさめして雪の楼門まっ赤なり
(水津順風)