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押絵作りで生き生き90歳~稲葉さん干支に挑む
60歳の手習いで〝押絵(おしえ)〟を覚え、今は〝卒寿(90歳)〟で押絵教授をしている老婦人がいる。和歌山県橋本市古佐田1の7の3、稲葉定子さんで、〝押絵三昧(ざんまい)〟の日々を送っていると、楽しくて、病気など知らないという。
稲葉さんは若い頃、紙人形作りが趣味だった。約30年前、大阪で〝押絵展覧会〟を見て、その美しさに感銘。さっそく大阪市淀川区西中島の「草雅流押絵」家元・白重峰雅さんに師事。毎月2日間、電車で通った。1988年(昭和63)4月、師範に認定され、家元の〝峰〟をとって、〝峰定(ほうじょう)〟の雅号をいただいた。同流派の最高齢の師範である。
稲葉さんの〝押絵三昧〟ぶりを見ると、今は、来年の干支(えと)である「辰(たつ)の押絵」作りだ。原画をパーツごとに、トレッシングペーパーで、原紙に写し、色紙に貼り付けて、岩絵の具で彩色を施していく。
すでに干支の押絵作りは、3巡目に入っていて、自宅には干支の色紙でいっぱい。その出来栄えは、例えば、空に渦巻きを乗じる龍の形相や、眼をらんらんと輝かせて竹薮を行く虎の姿など、すべて干支そのものがカラフルで、浮き彫りに見える傑作ばかり。
稲葉さんは「これまで干支の色紙を作っては、親戚や友人、知人に差し上げてきました。皆さん、すでに十二支が揃っていて、毎年、お正月には、私の制作した干支の押絵を飾ってくれています。うれしいことですよ」とにっこり話す。
他にも、馬上の武士が的に向って弓矢を入る「流鏑馬(やぶさめ)」や、石童丸が高野山の父に会いに行く「石童丸物語」の額、杜若(かきつばた)や梅を生けた押絵の衝立(ついたて)など、自宅には優雅な作品であふれている。
今は、地元の区民会館などで、弟子8人を指導する一方、自宅では押絵制作を楽しむ毎日の稲葉さん。「ほんとうに、食べるのも忘れるほどです。いまだに風邪など引きませんし、どこにも病気はありません。大好きな押絵、体が続く限り、まだまだ作り続けますよ」と明るく話した。