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地車〝やり回し〟勇壮に~橋本の秋祭り宵宮
紀州・東玄関の〝だんじりのまち〟和歌山県橋本市の秋祭りは10月8日(土)、宵宮を迎え、同市東家の市民会館前で行われた「地車パレード」には、JR南海橋本駅を中心とした各地域から計11台の地車が参加、豪快な〝やり回し〟を繰り広げて、地元はもちろん、大阪府河内長野市や奈良県五條市から訪れた大勢の見物客を堪能させた。
この日の紀北地方は、透き通るような秋晴れ。早朝から市脇の相賀(おうが)大神社、胡麻生(ごもう)の相賀八幡神社、御幸辻の牛頭神社、柱本の葛城神社など、各神社周辺地域で、鉦や太鼓、笛の音が流れ、ご当地の地車が、町中や田舎道を練り歩いた。
メイン会場の市民会館前には、午後1時半ごろから、次々と計12台の地車が勢ぞろい。ハッピ姿の若衆が、「いくぞ」と気合いもろとも綱を引けば、地車は加速度をつけて疾走する。屋根では大工方が、うちわ両手に飛び跳ねる。T字型の路では、若衆が遠心力で飛ばされそうになりながらも、前テコと後ろテコの阿吽(あうん)の呼吸で、見事〝やり回し〟を披露。あちこちからワーッと拍手が起きた。
会場には、橋本なればこその、素敵な地車が登場。現在、曳行されている中で、最古といわれる東家の〝天保の地車〟は、天保11年(1840)に、大阪府岸和田市中町が新調。〝浪速彫刻〟の名門・花岡源助らが「素戔鳴尊(すさのおのみこと)の大蛇退治」や、「鷲(わし)と猿」などの彫刻を施した最高傑作だ。
屋形舟の形をした橋本の〝舟楽車(ふなだんじり)〟は、楽車の舳先(へさき)で鉦(かね)、船尾で胡弓(こきゅう)、屋台内で三味線、小太鼓役が乗り込んで演奏し、「まだまだ、さっさい」という独特の囃子を入れながら、のんびりと曳行する。〝勇壮ぶり〟を競う風潮の中、唯我独尊、日本の古き良き時代の光景を見せている。
日没後は、地車を提灯(ちょうちん)で飾り、昼間と違ってゆったりと、鉦太鼓を叩きながら曳行、それぞれの本拠地へ帰って行った。ねじり鉢巻にハッピ姿の子供たちは、肩車している父の肩や、抱いてくれる母の胸で、眠っている姿も見られた。
10月9日(日)は「橋本の秋祭り」の本宮。橋本市隅田町の隅田八幡神社境内などで披露される担ぎ屋台(だんじり)が見ものである。