特集

さよなら初代ズームカー~最後の運転見守るファン

1997年(平成9)8月29日金曜日の極楽橋駅(和歌山県高野町)。多くの鉄道ファンらが駆けつけ、湧きたっている。初代ズームカー21000系最後の「さよなら運転」の日だ。
山岳部では低速度で勾配をのぼり、平坦部では高速運転できる名車ズームカーとして58年(昭和33)にデビュー。主に通勤電車に使用されていたが、時には臨時や代替えの特急「こうや」としても登場、約40年間にわたって走り続けてきた。
20回目のアーカイブスは、極楽橋駅からのレポート。
次々と到着する電車から降りてくる人たちのほとんどは、ケーブルカーに乗り換えて高野山に行く観光客。しかし、そのうちに「さよなら運転」の模様を写真にしようと、カメラを手にした人たちが少しずつ駅に留まり。時間とともに人の数は膨らんでいった。
やがて、ホームに「さようなら21000系」のヘッドマークを掲げ、この日のために新たに塗装し、ぴかぴかになったズームカーの姿が現れると、カメラが一斉に電車の方向に向けてシャッターを切り始めた。電車がゆっくりとホームに入ってくると、シャッター音が一段と激しさを増した。
電車が停まると、近づいてヘッドマークを写したり、電車をバックに記念写真に収まる場面などが見られた。中には「この電車ではありませんが、亡くなった夫が南海本線で同じズームカーを運転していました。思い出がいっぱい詰まっているんです」と、ハンカチで目頭を押さえながら、話す親子の姿もあった。
さよなら運転で、とくに構内線路内の撮影も許可され、駅員が警備するなか、線路に降り立った大勢の鉄道ファンらが、「よく働いてきただろう…」といわんばかりの、堂々とした表情の電車に向けて、盛んにシャッターを切り、撮り終えると「ご苦労さん」と語りかけるように電車を眺め、いつまでも惜しんでいた。
                         (フォトライター 北森久雄)

更新日:2011年9月15日 木曜日 21:10

関連記事

ページの先頭に戻る

  • 標準
  • 大
  • RSS
  • サイトマップ

検索

過去の記事