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視覚障害と闘う自画像出展!山内元橋本絵画同好会長
美人画の巨匠・中村貞以(なかむら・ていい)画伯(1900~1982)の愛弟子(まなでし)で、和歌山県橋本市文化協会元会長の山内清治(やまうち・せいじ)さん(76)は、視覚障害と闘いながら6月22日、橋本市教育文化会館4階で開幕した第54回「橋本絵画同好会展」に、日本画の自画像「何処(いずこ)へ」を出展し、訪れる観覧者から「まるで羅漢(らかん)さんみたいな絵であり、ふかく魅了される」と喝采を浴びている。
山内さんは昭和39年(1964)、橋本・伊都地方の絵画愛好者を集めて「橋本絵画同好会」を旗揚げした。同43年(1968)には絵画塾を開き、自宅近くには「鬼灯庵(ほおずきあん))を設立・主宰。多くの弟子を指導して、個性溢れる画家を育ててきた。
ところが山内さんは、約10年前から白内障を患い、今は左目を失明したうえ、右目も人の顔を見分けられないほどの苦境にある。平成17年(2005)末~同28年(2016)末、郷土の隅田八幡神社に大絵馬を制作・奉納してきたが、今は「十二支・奉納」を果たしたのを区切りにストップ。平素の絵画制作は、第1回展から出品してきた橋本絵画同好会展への出品ただ1点に絞っている。
今回の作品「何処へ」は、10号の小振りな日本画で、岩絵の具を使って描いた自画像。その両眼は白くて、その中心には、小さな黒点がくっきり存在する。頭には世にも不思議な形の帽子をかぶり、全身には色鮮やかな衣装をまとって、まるで羅漢さんのような表情で歩いている。
山内さんは「もう、この通り、小さな絵しか描けなくなりましたが、今の私の心境が、絵に現れていればうれしいです」と語り、にこやかに観覧者に対応していた。
「橋本絵画同好会展」では、高橋佳子(たかはし・けいこ)会長の「侘助(わびすけ)」や、名高い鈴木源二(すずき・げんじ)さんの「祈り」、心優しい植西祥司(うえにし・しょうじ)さんの「串本にて」など、35人が約70点を出展している。
同展は24日(日)まで。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は同4時)。観覧無料。第12回「楽描会展」と同時開催。
写真(上)は自画像「何処へ」を出展した視覚障害と闘う日本画家・山内さん。写真(中)は山内さんの日本画「何処へ」。写真(下)は素晴らしい第54回「橋本絵画同好会展」の風景。