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あっ痛っ!雷が落下・爆笑の渦~橋本市民狂言楽しく
全国でも珍しい和歌山県橋本市の市民グループによる「橋本市民狂言」が2月5日、橋本市教育文化会館2階大ホールで開かれ、約250人の満場の市民が、ユーモアあふれる日本の伝統芸能を堪能した。とくに「橋本狂言会」を創設した歯科医師・後藤光基(ごとう・てるもと)さん(故人)制作の鬼面「武悪(ぶあく)」も、演題「神鳴(かみなり)」で披露され、多くの狂言ファンを感動させていた。
橋本市民狂言は、橋本狂言会会員や市内の公民館館長らでつくる同実行委員会が主催。橋本市と市教委が共催、狂言師でつくる大和座狂言事務所(大阪府吹田市)が協力して、毎年2月に開催、今年で6回目。
平田宗一郎(ひらた・そういちろう)実行委員長や平木哲朗(ひらき・てつろう)市長らが挨拶。第1部は、市内の「こども狂言教室」で学ぶ小中学生11人が初参加。演目「舎弟(しゃてい)」「梟(ふくろう)」「盆山(ぼんさん)」「口真似(くちまね)」の4幕をかわいく演じて、客席の大人の胸をきゅんきゅんさせた。
第2部は5幕が演じられ、橋本狂言会会員でFMはしもと報道部長の中野豊信(なかの・とよのぶ)さんが、後藤さん制作の鬼面「武悪」をかぶり、「神鳴(かみなり)」を熱演して、会場を爆笑の渦(うず)に…。
また「こども狂言教室」で学び、今は橋本狂言会の若手ホープである社会人、植村知明(うえむら・ともあき)さん・英明(ひであき)さん兄弟が、会員の脇田清司(わきた・きよし)さんとともに演目「水掛聟(みずかけむこ)」を演じ、その逞しい成長ぶりが、多くの狂言ファンを喜ばせた。
後藤さんは歯科医師で、平成8年(1996)4月に橋本狂言会の前身である「橋本狂言を親しむ会」を設立。大和座狂言事務所の安東伸元(あんどう・のぶもと)主宰や名だたる能面師に師事。自ら面打ちに励み、狂言の舞台に立ち、伝統文化の継承に心血を注いだ。
今回、中野さんは、その後藤さんの鬼面「武悪」をかぶって雷(かみなり)役、岸田和美(きしだ・かずみ)さんが医師役で出演。
ゴロゴロゴロと雷鳴がとどろき、雲間から落ちた雷が、腰に打撲傷を負う。雷は旅の医師に、注射で治してもらう。
雷と医師は、安東主宰や安東元(げん)、安東睦郎(むつろう)・各狂言師の地謡(じうたい)にのせて、浮き浮きと踊り、そのお礼に「向こう800年間は台風や水害をなくす」と約束。雷が五色の揚幕(あげまく)の向こうへ去ると、後藤さんを知る狂言ファンは、大きな拍手で、中野さんの演技とともに後藤さんの功績を讃えていた。
写真(上)は雲間から落下した雷。写真(中)は地謡にのせて踊る雷。写真(下)は医師に腰の手当てを頼む雷、