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綺麗、戦国美人「お市の方」♪高野山霊宝館で名宝展
わが国では戦国時代の〝超美人〟と讃えられる、織田信長の妹「浅井(あざい)長政夫人=お市の方」の肖像画(重要文化財)が、約2年間の保存修理を終えて、7月11日(土)、和歌山県高野町高野山の高野山霊宝館で開幕の第36回「高野山大寳藏展 高野山の名宝」で、他の国宝・重文とともに展示、多くの参拝・観光客を魅了しそう。高野山霊宝館では「これら高野山の名宝を観賞し、高野山開創1200年の歴史の息吹を感じていただきたい」と来館を呼び掛けている。
高野山大学の山陰加春夫(やまかげ・かずお)名誉教授と高野山霊宝館の鳥羽正剛(とば・せいごう)学芸員の説明によると、高野山には現在117か寺の塔頭(たっちゅう)寺院があり、前期(7月11日~8月17日)と後期(8月20日~9月27日)に分けて、各塔頭寺院に伝わる国宝・重文など、計約60件の名宝(絵画、彫刻、工芸、考古、書跡)を展示するという。
前期では、例えば専門家の技術により、製作当時の色彩を美しく甦らせた「浅井長政夫人像」(江戸時代)や「浅井長政像」(桃山時代)、長政の父の「浅井久政像」(同)の計3幅=いずれも重文、絹本着色、浅井家の菩提寺・持明院所蔵=を出展。
「お市の方」は、長政の妻(後に柴田勝家に嫁ぐ)で、淀殿(茶々=豊臣秀吉の側室)、初(京極高次の正室)、江(徳川秀忠の継室)の三姉妹の母。その肖像画は長政の17回忌、お市の方の7回忌の際に、淀殿の命で描かれたとされている。
また、書跡「金剛峯寺根本縁起」(南北朝時代、重文、長さ428・8センチ、幅50・0センチ)を展示。同館では、これは「空海が密教の高野山を開創するにあたり、地主神の丹生都比売(にうつひめ)明神から、広大な寺領を譲り受けた経緯、また巻中にはその範囲を示す絵図が記されている」と解説。
そのうえで「本縁起の原本は、空海自らが記し、また、これに御手印(おていん)を捺印した『弘法大師御手印縁起』とされる。その後、建武2年(1335)、後醍醐天皇は高野山の結界を示す大切な縁起とし、写しの巻末に自らの手形を捺印して、これを正本とし、内外不出にした」と案内。高野山とは、この後醍醐天皇の手形の捺印により、しっかりと守られてきたとことを感じさせている。
さらに、高野山開創法会1200年記念特別公開として、前期・後期を通じ、彫刻「木造孔雀明王像」(像高78・8センチ、鎌倉時代、快慶作)を展示。これは「美しい羽を持ったクジャクがサソリや毒蛇、毒草を好んで食べるように、人間の願望である三毒を浄化する明王として、また災を除き、雨を祈る本尊として信仰されてきた」と案内。その神々しさがひしひしと人々の心を癒す。
このほか、絵画では「阿弥陀如来像」(鎌倉時代、成福院所蔵、重文)や、書跡「紙本墨書 町石建立供養願文」(鎌倉時代、金剛峯寺所蔵)などを展示、形と心の世界の歴史を彷彿とさせている。
高野山霊宝館は、会期中無休。開館時間は午前8時30分~午後5時30分(入館は午後5時まで)。拝観料は一般600円、高校・大学生350円、小・中学生250円。団体割引あり。障害者手帳お持ちの方(介護者1人を含む)は無料。
交通アクセスは、電車の場合、南海なんば駅から極楽橋駅まで特急で約1時間20分、急行約1時間40分。極楽橋からケーブルカーで高野山へ。高野山駅から南海バス奥の院前行き「千手院橋」下車、徒歩約10分。マイカーの場合は、大阪から約2時間。国道170号、371号経由で橋本市へ。橋本から国道370号、480号で高野山へ。無料駐車場あり。高野山霊宝館(電話=0736・56・2029)
写真(上)は「浅井長政夫人像」肖像画を学芸員の説明で拝観する女性。写真(中)は彫刻「木造孔雀明王像」(快慶作)。写真(下)は書跡「金剛峯寺根本縁起」に捺印された後醍醐天皇の手形。