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後藤さんの遺作「能面」~偲ぶ妻の書「成仏」

紀北地方の文人墨客の作品を集めた「紀北文人展」が1月25日、和歌山県橋本市東家1の6の27の橋本市教育文化会館4階で始まった。今回は、昨年12月5日、病気のため死去した前橋本市教育委員会委員長・後藤光石(本名・光基)さん(享年76)の遺作の能面と、妻・後藤慧玉(本名・加寿恵)さんの書作が添えられていて、多くの市民が光石さんの遺徳を偲んでいる。27日(日)まで。入場無料。
同展は紀北文人会(坂部蒼石会長)が主催。同会は書家の西林凡石さんら3人が、戦後の混乱期に「日本文化を大切にしたい」と考え、1948年6月に発足。第1回展を市内の応其寺で開催して大反響を呼び、後に市内の後藤ビル2、3階の画廊、さらに橋本市教育文化会館に会場を移して開催。今回で66回目になる。
後藤光石さんの能面は「翁(おきな)」と「深井」の2作。説明書きに「深井」は「人生経験を経た年のいった中年女性で、眼差しは憂いを含む慈愛深い表情。子を知った母としての狂女物に使う」とあり、能楽の曲目「隅田川」「桜川」「三井寺」などに使われる。「翁」は「天下泰平、五穀豊穣、家内安全、平和を祈る儀式面。切顎(きれあご)の形式も能面以前(猿楽)の古態である」と説明している。名高い「橋本市民狂言」の立役者・後藤光石さんの遺作だけに、観る者の心を引き付けている。
後藤慧玉さんは紀北文人会の創始者・西林さんの二女で、今回は、西林さんが愛読した榎本栄一さん(故人)作の「成仏」という題の詩を作品にし、能面わきに掲示した。「成仏 ときによいこともし わるいこともし ながい一生を あるき 人間はみんな 仏さまになります」と、誰にでも読める書体で運筆している。
慧玉さんは「光石の翁面は数年前に制作したものですが、深井面は光石が元気だった昨年1月から8月末にかけて制作、その後、能面の師匠に仕上げていただいたものです」と述べた。
また、「榎本さんは信心深い方で、その詩は、平易なことばで綴られ、心打たれます。成仏という詩は、実に味わい深いです」と話し、「私は右利きですが、この書は、あえて左手で、しっかり筆先を見て、文字がわかるように、丁寧に書きました」語った。
このほか、会場には坂部蒼石・会長の書や日本板画院同人・巽好彦さんの木板画をはじめ、日本画、陶芸、生け花など計約36人の約80点を展示。個性溢れる作品が文人の心の光を放っている。。
時間は午前9時半~午後5時(最終日は午後4時)。なお、「それぞれの世界展」も同会館4階で同時開催されている。
写真(上)は後藤光石さんの遺作の能面で、手前が「深井」向こうか゜「翁」。写真(中)は妻の後藤慧玉さんの書「成仏」。写真(下)は多くの市民が見入っている後藤さん夫婦の作品。


更新日:2013年1月25日 金曜日 21:47

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