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〝戦争文庫〟1日~開催…善意の寄贈本で

太平洋戦争に関する図書を集めた「戦争文庫」が、今年も8月1日(水)~同30日(木)、和歌山県橋本市のJR南海橋本駅にある「ゆかいな図書館」で開かれることになった。図書館世話人の阪口繁昭さん(84)は「次期開催は4年後に…と考えていましたが、その後、沢山の戦争関係の〝善意の図書〟が寄せられ、その熱意に押されて、2年連続の開催を決めました」と言っている。1日は書籍の入れ替え作業があるので、閲覧開始時間は午後2時頃になりそう。
阪口さんは、太平洋戦争中、満蒙開拓青年義勇軍の一員。中ソ国境で頭に被弾して、耳が不自由になり、捕虜としてシベリアに抑留され、多くの戦友を亡くしながら、九死に一生を得て帰国した辛い戦争経験を持つ。
「ゆかいな図書館」は、1998年9月にオープン。小説や詩などの文庫本、単行本など約1500冊を並べ、主に同駅の乗降客が、電車の時間待ちに利用。持ち帰り自由なので、車内での読書も盛ん。
昨年開催した第1回「戦争文庫」では、阪口さんが長い間、多くの寄贈本の中から整理・保存していた戦争関係の200冊を並べた。持ち帰り自由なため、うち107冊が返却されず、阪口さんは「これでは当分、開催は困難。次回は4年後に…」と判断していた。
ところがその後、阪口さんと同じ満蒙開拓少年義勇隊で働いたという和歌山県紀ノ川市の男性や、匿名の人たち計4人から、ダンボール箱6つに詰められた戦争関係の図書約500冊が、阪口さん方に届いた。ある手紙には、本紙報道で知ったらしい人から、「戦争文庫の終了後、本の数が減っていたことは残念でなりません。もしよろしければ、今回、送らせて頂いた本を活用ください」と丁寧に書かれていた。
善意の4人から届いたのは、例えば「20世紀 どんな時代だったのか~戦争編 日本の戦争」(読売新聞 編)、「教科書が教えない歴史」(藤岡信勝・東大教授 自由主義史観研究会)、「15歳が聞いた東京大空襲」(早乙女勝元 編)、「私は貝になりたい~あるBC戦犯の叫び」(加藤哲太郎 著)など、いずれも、読み応えのありそうな図書ばかり。
今では少なくなった戦場体験者の一人である阪口さんは、これら戦争関係の本の背表紙や、帯符などを読みながら、「戦争文庫」の準備を開始。今回は「ゆいな図書館」に400~500冊を並べるとともに、「平素は図書の持ち帰りを自由にしていますが、今回の戦争文庫につきましては、今後も平和の大切さを語り継ぐために、必ず返却下さいますよう、お願いし致します」という、貼り紙を出すことにしている。
阪口さんは「シベリア抑留生活では、いろんな苦渋をなめましたが、いまだに夢に見るのは、ソ連の兵隊に連行される途中、もうこれ以上は歩けず、倒れた戦友が〝おい、阪口、おれをほっていかないでくれ〟と、息も絶え絶えにすがりついてきた、その目やその言葉。私自身も死の寸前だったので、どうにもできなかったことが、いまだに悔やまれて…」と話し、「戦争とは、自分が何もしなかったら殺される。自分の命を守るには、敵を殺す以外にない。それが戦争です。戦争関係の本には、必ず、平和の大切さを説いていると思います。期待してください」と話した。
写真(上)は自宅で「戦争文庫」の準備を始めた阪口さん。写真(中)は匿名などで寄贈された戦争関係の図書の一部。写真(下)は昨年の「戦争文庫」を手伝った橋本高校野球部員ら。


更新日:2012年7月16日 月曜日 09:17

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