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慈尊院の多宝塔…美しく修復~女性3億円寄進
2015年の高野山開創1200年記念大法会に向けて、解体修復工事が行われていた和歌山県九度山町の世界遺産・女人高野別格本山「慈尊院」の多宝塔(県指定文化財)が、美しく完成した。すでに同境内では大師堂の修復工事に着手、弘法大師の御母公を祀っている弥勒堂(みろくどう)の檜皮葺(ひわだぶき)屋根も葺き替える予定で、安念清邦住職は「多くの篤信者のお陰で〝平成の大修理〟が、つつがなく進んでいます」と喜んでいる。
同院は816年、弘法大師が高野山の表玄関として創建された。大師を香川・善通寺から訪ねてきた御母公は、女人禁制のため大師に会えず、同院に迎えられたが、翌年83歳で死去。同院の弥勒堂に祀られている。
御母公が弥勒仏を崇拝していたので、大師は弥勒堂を建造。「慈尊」は「弥勒菩薩」の別名なので、慈尊院と呼ばれている。本尊は木造弥勒仏坐像(国宝)。
多宝塔も大師の創建だが、火災で焼失後、再建され、寛永年間(1624年~1643年)に再々建された。本尊は大日如来で、大日塔とも呼ばれる。
6月29日には、工事の足場や囲いなどが、完全に取り除かれ、銅板葺きの反りのある2層の屋根、水煙をかかげた相輪、どっしりと均整がとれた朱塗りの塔が、梅雨晴間(つゆはれま)の境内に厳かな威容を見せた。あとは、塔の周囲に玉砂利を敷き詰め、門から多宝塔まで320枚の石畳を敷くことになっている。
同院の話では「弘法大師御母公篤信者」である北海道の女性信者から3億円の寄進があり、それを多宝塔の修復費用とし、他の篤信者からの浄財を大師堂、弥勒堂の修復費用に充てる。安念住職は「大法会に際しては、ご本尊・木造弥勒仏坐像ご開帳など、当院として篤信者のために、精一杯努めたい」と話した。
写真(上)は修復工事が完成した慈尊院の多宝塔=手前は門。写真(中)紫陽花の花に朱色が映える慈尊院の多宝塔。写真(下)は高台ら眺めた慈尊院の多宝塔。