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橋本駅の「ゆかいな図書館」新装オープン
和歌山県橋本市のJR・南海「橋本駅」のバリアフリー化工事で閉鎖していた「ゆかいな図書館」は、3月1日、駅の工事完成と同時に新装オープン。昨年4月閉鎖以来、ちょうど1年ぶり。この図書館は、本の持ち出しが自由で、乗降客に好評なだけに、世話人の阪口繁昭さん(81)は、「廃止されず、再開できてよかった」と喜んでいる。
新装開館した図書館は、駅正面の改札口に通じる通路わきにある。以前は改札口を入った1番ホームわきにあったが、今度は少し南の外側に移転。乗降客以外でも、利用できるようになった。南側から窓明かりを取り入れた、約8畳程度の広さで、6人がゆったり座れる座席もある。2月28日には、世話人ら数人が、全国の読書家から贈られ、保存していた小説や詩など、主に単行・文庫本約1500冊を書棚に並べた。また、世話人や県立橋本高校生徒会、駅長らは、「本が不足しているので、不要になった本の寄贈を」とか、「持ち出した本は必ず返してください」と壁に掲げた。
同図書館は1998年9月、待合室を改造してオープンした。昔は、非行の温床となっていたため、橋本市教委が「図書館にしては」と発案。非行防止運動や駅前清掃をしていた阪口さんが「いい話」と考え、JR側に懇願。駅構内に全国「でも珍しい「民営図書館」が実現した。図書館内には係員の姿はなく、本の持ち帰りも、返却もまったく自由だ。本はだんだん減っていくが、全国の「善意の人々」が寄贈してくれた「不要本」で補充。「善意の人々」は、本をダンボール箱に詰め、駅や阪口さん宅へ、次々と送ってきた。今では、電車待ちに読書する通勤通学客のほか、観光客も立ち寄り、「こんな風に本が読めるなんて」と感激。非行話などは、図書館の開館と同時になくなった。阪口さんは「駅の工事で、図書館が廃止されるのではと、非常に心配した。でも、JR側が利用者の気持ちを、よく汲んでくれた。今度は、本不足が心配ですが、やはり善意に期待します」と話した。
(2011年3月1日 曽我一豊)