特集
〔はだか談義〕 農家は〝国土の防人〟ですぞ
橋本市の居酒屋で…
発信機「こんな写真、撮ったよ。どこかわかる?」
ビール10本「おお、わかる。わからいでかい」
発信機「どこです?」
ビール10本「この写真に写ってるのんは〝上田の棚田〟や」
発信機「やっぱり農業機械を売ってるだけに、一発でわかるんやなあ」
ビール10本「当たり前よ。橋本市隅田町の紀ノ川の北側から見たら、紀ノ川の南側の右から上田、中道、赤塚、恋野や。こないに棚田があるのんは、上田しかないわい」
発信機「棚田の真ん中あたりから、えらい煙が立ちのぼってるやろ。これ、何、焼いてるのん?」
ビール10本「枯れ草を集めて、燃やしてるんやろ。柿畑では今、柿の木の枝を選定して、枝を焼いてるよ」
発信機「道理で、早春の、紀ノ川沿いの山々は、昔の歌謡曲みたいや。♪山の煙のほのぼのと…。紀ノ川筋はなかなかええ風景や」
ビール10本「そうやろ。なかでも棚田っちゅうのんは、そう簡単にできたもんやない。昔の人が、何代にもわたって、あんな急な山の斜面を開墾して、作り上げたもんや」
発信機「やっぱり、ええこというわ」
ビール10本「そうやろ。棚田には大きな農業機械は入らない。水を引くのも、畦道を手入れするのも、楽やない。それでも米の値段は。平地の何分の一かや。苦労してんのに、値段は反対になるんよ」
発信機「そうやな。日本の国って、弥生時代から、せっせと田畑を作ってきたのになあ。この辺の農家の平均年齢は65歳ぐらい。それでも後継者はいない。あと10年もしたら、大変なことになるのは、目に見えているけどなあ」
ビール10本「そうよ。何とかしてよ」
発信機「私には何もできん、庶民はせいぜい、ぼやく程度や、でも、一人より100人、100人より1000人…と、ぼやきも広がれば、途方もなく大きな力になる」
ビール10本「人間、衣食住が大事や。中でも農業は、とても大事やでえ」
発信機「そう思うわ。農家は、ただ単に、農業をやってるのと違う。実質、日本の国土を作ってきて、国土を守ってるんや。TPP(環太平洋経済連携協定)かオッペケぺーか、何か知らんが、途中の議論や理屈は何でもよろしい。目的ははっきりしているんやさかい、政治権力には、しっかり農業、すなわち国土を守ってほしいもんやねえ」
ビール10本「わーっ、ええこと言う。涙出てくるよ。ママ、発信機にビール10本、やったって」
発信機「1本で、ええけど」
ビール10本「10本飲んでくれへんのか。1本なら、やらん、やらん。わっはっは…」
写真(上)は橋本市の紀ノ川南側の棚田から立ちのぼる早春の煙。写真(中)は剪定を終えた柿の木のあたりから眺めた棚田の風景。写真(下)は山の峰付近から白雲のように立つ煙。
名前は、発信機が適当に付けたニックネームです。