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葛城凍豆腐140年の軌跡♪橋本郷土資料館・企画展
紀北地方の北西側に聳える葛城山(和泉山脈)が、昔、天然の凍豆腐(こおりどうふ=高野豆腐)の一大生産地であった歴史を紹介する企画展「葛城凍豆腐~140年の軌跡~」が、和歌山県橋本市御幸辻786の杉村公園内にある橋本市郷土資料館で始まった。凍豆腐づくりに使われた道具類や文献資料など35点が展示されており、企画した奥裕香子(おく・ゆかこ)学芸員は「ぜひご覧になり、昔の凍豆腐づくりの歴史を知ってほしい」と言っている。3月31日(金)まで。観覧無料。
展示説明によると、文化4年(1807)に数人の男性が葛城山で、凍豆腐づくりを開始。豆腐製造小屋が沢山できて、周辺の村や但馬(兵庫県北部)・丹後(京都府北部)の人々が製造に携わった。
江戸時代には株仲間をつくり、原料の大豆の運搬費を定めるなど組織化。生産者の増加とともに生産量も増えて、この食文化は拡大したが、昭和24年(1949)には、大豆の減少や冷凍技術の発達などにより、葛城凍豆腐づくりはすたれ、製造中止となった。
凍豆腐・黄金期の葛城山は、山の稜線が夜間作業の灯に輝いていたが、今はその豆腐小屋跡に、苔むした水槽や石臼(いしうす)が、わずかに残っている状態。
奥・学芸員は、郷土資料館の資料を整理中、葛城凍豆腐製造同業組合の「沿革誌」(明治40年)を見て、今は忘れられている凍豆腐の歴史に感銘を受け、この素晴らしい歴史について、小中学生をはじめ多くの市民に伝えようと企画。
これまで凍豆腐業者から同資料館に寄託・寄贈されていた道具類や、文献資料類を中心に選択・収集・展示したという。
企画展では、例えば豆漬け桶(まめつけおけ)、豆上げ籠(まめあげかご)、湯切り籠(ゆきりかご)、豆腐裁断具(とうふさいだんぐ)などの道具類、牛による大正時代の大豆運搬風景の写真、橋本市周辺の豆腐製造地域の略図、葛城凍豆腐製造に関する年表などを展示。
また、館員の久保加代美(くぼ・かよみ)さんは、紀伊名所図会に描かれた豆腐製造風景を人形たちで表した「立体造形ボード」(幅1メートル余、高さ約77センチ)を制作・展示。紙粘土(かみねんど)で作った豆腐職人が、端切(はぎ)れの作業着を身に着けて働く様子が、生き生きと心に迫り、厳しくも楽しい雰囲気を醸し出している。
3月18日(土)午前10時~同11時30分には、「葛城山凍豆腐物語」をテーマにした企画展講座を開催。奥・学芸員がわかりやすく解説することになっている。
受講は無料。定員30人。予約制で定員になり次第締め切られる。希望者は橋本市郷土資料館(電話=0736・32・4685)へ。
同館の開館時間は午前9時~午後5時(受付=同4時40分)。休館日は月曜日と祝日の翌日。
写真(上)は紀伊名所図会を模した豆腐製造風景の「立体造形ボード」と制作者の久保さん。写真(中、下)は展示された凍豆腐製造の道具類の数々