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面付け体験・歌唱も楽しく♪第5回橋本市民狂言
和歌山県橋本市の市民グループによる「第5回橋本市民狂言」(同実行委など主催)が、2月7日、橋本市教育文化会館2階大ホールで開かれた。今回は市民狂言披露のほか、大和座狂言事務所=安東伸元(あんどう・のぶもと)主宰=による「歌唱演習と面付け体験」があり、大勢の市民が立春過ぎのひととき「古典芸能の世界」を楽しんだ。
初めに橋本市民狂言実行委員会の尾岡進(おおか・すすむ)委員長が開催できたことに謝辞を述べ、平木哲朗(ひらき・てつろう)市長と中本正人(なかもと・まさと)市議会議長が「橋本は狂言の本場」と讃え、「ゆっくり楽しんでださい」と挨拶した。
この後、第1部で橋本狂言会のメンバーが、鬼瓦を見て国の妻を思って泣きだす「鬼瓦(おにがわら)」、再婚の相手をよく見たら酒呑みの元妻だった「因幡堂(いなばどう)」など4題を演じ、その滑稽(こっけい)さと、人間っぽい演技が多くの鑑賞者を喜ばせた。
「面付け体験」では、橋本狂言会の元会長で歯科医師の故・後藤光基(ごとう・てるもと)さん作の狂言面や同事務所が持参した能面の計8面を用意。安東主宰とその弟子らが希望者に登壇してもらい、魂が宿るような般若面や葵上(あおいのうえ)面などを顔に取り付けた。安東主宰は「西洋では顔にメイキッヤプをしドーランを塗りますが、日本では自分の表情を出さず、能狂言面を被ります」と説明。
そのうえで「能狂言の面は、目の穴が小さく、被ると視界も狭い」と話し、「私たちは舞台の隅に立てた、目付柱(めつけばしら)で遠近感を感じながら、このようにすり足で演じています」と、自ら舞って見せると、客席はその難しい舞台芸樹の素晴らしさを感じた様子。
「歌唱演習」では、全員に配布した日本の古典歌曲「狂言小謡(こうた)」=「ご子孫(しそん)も繁盛、ご寿命(じゅみょう)も長く、生きる松の 千代かけて、御慶びの 神酒(みき)をいざや、勧(すす)めん」を学習。
安東主宰は「これは善通寺という曲名の狂言の謡(うたい)です。最近の日本語はテロップが必要なほど乱れていて残念です。この謡は高野山麓の皆さんが、普段唱えている読経と同じ調子で…」と指導。自ら扇で膝を叩いて拍子をとり、腹から声を出してリードすると、市民もその後に続いて、しばし能狂言の心に浸っていた。
なお、平成27年度「こども狂言教室」発表会は、2月21日(日)(午後0時30分開場、同1時開演)、橋本市民会館ホールで開かれる。入場無料。問い合わせは橋本市民会館(0736・33・6108)。
写真(上、下)は大和座狂言事務所の指導で能狂言のち「面付け体験」に参加する市民。写真(中)は狂言「蝸牛(かたつむり)」を演じる山伏・尾崎弘尚(おざき・ひろたか)さん、主人・植村和明(うえむら・かずあき)さん、太郎冠者・久保綾耶華(くぼ・あやか)さん。