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人間国宝・井上さんに「京舞」習う♪城山小児童たち
人間国宝で京舞(きょうまい)井上流五世家元・井上八千代(いのうえ・やちよ)さんによる日本伝統の芸術教育が、12月10日、和歌山県橋本市城山台の市立城山小学校・体育館で、同校5・6年生児童を対象に初めて行われた。井上さんは日本情緒たっぷりの「京舞のいろは」を教え、子どもたちは日本舞踊の奥ゆかしさを感得した様子だった。
この勉強は文化芸術による子供の育成事業「子供 夢・アート・アカデミー」の一環で、児童約110人が参加し、保護者や地元ボランティアら約60人が観覧した。井上さんと三味線の梅辻理恵(うめつじ・りえ)さん、補助講師の井上安寿子(いのうえ・やすこ)さんと井上葉子(いのうえ・ようこ)さんを拍手で迎えた。
井上八千代さん=本名・観世三千子(かんぜ・みちこ)=は、昭和31年(1956)に京都で観世流能楽師・片山幽雪(かたやま・ゆうせつ)の長女として出生。祖母・井上愛子(いのうえ・あいこ=四世井上八千代)に師事。平成12年に襲名後、紫綬褒章受章、日本芸術院会員となり、同27年に重要無形文化財(人間国宝)に認定された。
この日、井上さんは舞台に立ち、自然そのものの梅辻さんの三味線の音に乗せて、源平合戦の「八島(屋島=やしま)」や「珠取海女(たまとりあま)」を、しっとりと流れるように披露して、子どもたちの心を魅了した。
マイクを手に舞踊について「舞(まい)とは能楽に近くて、寂しい、うれしいなど、自分の心を表わします。物語性を表わす踊りとの違いがあります」と前置き。京舞は「おいど(お尻)を落として、すり足で、水平に回ります」と強調し、自ら着物の袂(たもと)を巧みに使いながら、「とても悲しい」「もの思いにふける」「楽しい」「すねる」といった、日本女性の微妙な仕草を、見事に演じて見せた。
この後、全員に扇子を持たせ、正座して扇子を前に置き、深々とお辞儀で始まる大切さを指導。やがて扇子をかざし、お尻を下げ、足を上げて、「七福神」の恵比寿さまや大黒さまを演じさせると、とくに女子児童はしなやかな京舞に興味を持った様子。
また、梅辻さんは三味線を見せながら、三味線の棹(さお)は胴(どう)を貫いていること、撥(ばち)とコマは演奏に不可欠なことを教え、「こんな音も出せますよ」と言って、細やかに撥を使い、タヌキの腹鼓やネズミの駆ける音を奏でると、子どもたちは目を丸くしていた。
最後に同校児童を代表して6年生・山本莉瑠(やまもと・りる)さんが「井上先生の京舞は美しくて素敵、綺麗な空間に圧倒されました」と御礼を述べ、6年生の植西寛太(うえにし・かんた)くんも児童を代表して花束を贈った。
林民和(はやし・たみかず)校長は「井上先生のご指導、子どもたちは数十年後に思い起こし、改めて先生に教えていただいたことに驚くことでしょう。心打つ、身に沁みる、日本文化を大切にしたいです」と謝辞を述べた。井上さんが「必ず京都へきて京舞、それに〝都をどり〟を見てね」と語りかけると、子どもたちは「ハーイ」という風に頷いて、拍手で応えていた。
写真(上)は京舞を披露する井上八千代さん=中央ら。写真(中)は扇子を持ち京舞「七福神」を習う子どもたち。写真(下)は梅辻さんの三味線で舞う井上さん。