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巨大地震、傷病者を救え!橋本市民病院で連携訓練
南海トラフを震源とする巨大地震が発生した際、スムーズな医療救護活動で、最大多数の傷病者を治療して、社会復帰させようという、和歌山県内で最大規模級の「第10回橋本市災害医療フォーラム」が10月31日、同県橋本市小峰台の橋本市民病院=嶋田浩介(しまだ・こうすけ)院長=で開かれた。
橋本市が主催、災害拠点病院の橋本市民病院が主管、橋本保健所が共催。医師や看護師、消防士、保健所員、自治会役員ら計約280人が参加。現場には全国でも数少ない和歌山県薬剤師会の「モバイルファーマシー(災害対策医薬品供給車両)」も展示された。
午前は同病院外科筆頭部長の坂田好史(さかた・よしふみ)医師がオリエンテーション。伊都薬剤師会の中谷和洋(なかたに・かずひろ)薬剤師が「モバイルファーマシーについて」説明するなど3人が講演。坂田医師がトリアージ―(医師が災害現場などで患者を診察、重傷者順に治療の順番を決めること)を説明した。
午後は実地演習。紀伊半島沖でマグニチュード9・1の海溝型地震が発生。県内は震度7を観測し、沿岸部は大津波に襲われ、橋本市民病院に多数の傷病者が搬送されているという想定。
和歌山県立看護学院の学生たちが、頭部打撲や骨盤骨折などの〝模擬傷病者〟となり、山崩れや家屋倒壊などで負傷。城山台連合 自主防災会=桐井良和(きりい・よしかず)会長=の人たちが2台のリヤカーを使い負傷者を救出・搬送した。
医師があわただしい現場で診断し、リヤカーや救急車で、トリアージタグをつけた患者を救護所に搬送。医師は素早く傷病程度の順位を判断し、傷病者を振り分けて、呼吸、血圧、脈拍などを調べ、看護師とともに手術や酸素投与、点滴などの手当てを施した。
訓練後の現場で、伊都医師会の前田至規(まえだ・よしのり)会長が「訓練で何か感じたことは」と質問したのに対し、自主防災会の人たちからは「寒い時には毛布やシートが必要だと思う」「リヤカーのほかに車椅子も使いたい」などという率直な意見が出た。
全体の訓練結果・検証会では、各参加グループから「トリアージタグのついていない患者には、どう対応していいのか困った」「顔見知りなのに、名前がわからないので、どうしても連係プレーが遅れる」「そばに医師がいないので、死亡診断はできないし…」などという意味の課題が報告された。
同災害医療フォーラムで本部長を務めた嶋田院長は「訓練は100点でなくていいと思います。この訓練でしっかり課題を見つけ、本当の災害に備えることが大切です」と端的に講評。この日も真剣に〝模擬傷病者〟役を果たした県立看護学院生の中から、最優秀1人、優秀4人を表彰した後、嶋田院長は「傷病者になったその目線が大切であり、その経験は必ず役立ちます。将来、医療側に立って活躍してください」と激励して結んだ。
写真(上)は災害医療現場で傷病者のトリアージ―を行う医師たち。写真(中)は訓練の講評を行う嶋田本部長(橋本市民病院長)=左。写真(下)はモバイルファーマシーの前の救護所で行われた災害医療訓練。