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女性が研鑽!伝統の組子細工~池田さん後継を期待
江戸時代に京都から高野山に伝わった建具技術で、今は和歌山県の伝統的工芸品に指定されている「紀州高野組子細工」を受け継ぐ木工芸家・池田秀峯(いけだ・しゅうほう)さん(69)=橋本市東家=の元に、同市古佐田の西奈美枝(にし・なみえ)さん(31)が入門して満1年になる。西さんは「師匠に負けない作品が作りたい」と、こんこんと職人気質が湧いていて、池田さんはその真剣な研鑽ぶりに「将来が楽しみ」と話し、伝統工芸の後継を期待している。
池田さんは、高野山金剛峯寺承認/厚生労働省認定一級技能師、和歌山大学学生自主創造センターシニアアドバイザー、和歌山県職業訓練指導員、厚労省ものづくりマスター。平成9年に天皇・皇后両陛下の御来県記念に勇壮な鯨(くじら)を表した衝立(ついたて)「勇泳」を、同11年には明治神宮に額「桜漫(ろうまん)の冨士」を献上。各所に逸品を寄贈している。
紀州高野組子細工とは、釘を使わず、木を細かく切った組子を木枠にはめ込み、木の材質や色の濃淡により、山河の風景や、風神雷神、花鳥風月などを表現。屏風や衝立などにする。
西さんは、大阪・堺のデパート店員をしていたが、たまたま組子細工を体験した母の奨めで、「素敵な仕事」と興味がわき、昨年10月、池田さんに弟子入りした。
以来、毎週月曜~土曜日の午前9時~午後6時、同市市脇の建具工房で、見習い作業に挑戦。今は、池田さんが20数年前に制作し、糊(のり)付けしていない「木立に富士」や「遠望の富士」など、未完成の額(がく)の仕上げを担当。木枠にはめられた組子を一つ一つ取り外し、しっかり糊付けして、丁寧にはめ込んでいる。
池田さんは「この作業により、組子の組み方や、材質の使い分け、絵柄の構成などの感覚を磨いてもらっています」と話し、西さんは「師匠の昔の作品の出来栄えや、作品の隅々に苦心の跡が感じられて、いい勉強になります」と話し、指先やピンセットを、巧みに働かせている。
池田さんは「ふつうは、すべて任せられるようになるまで、20年以上かかりますが、西さんは努力家のうえ、感覚も鋭いので、5、6年で大半をマスターするでしょう」ときっぱり。西さんも「この仕事がとても楽しいし、ぜひ、最後までやりとげたい」と誓っていた。
写真は池田さんの作品の仕上げ(糊付け)作業に打ち込む西さん。