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空飛ぶ宝石・交尾風景♪杉村公園にナガサキアゲハ
和歌山県橋本市にある杉村公園。私がキノコの写真を撮るために散策していると、1人の老人が話しかけてきた。「木になんだかわからないものがぶら下がっている」という。老人の案内でその場へ急いだ。
確かにモミジの葉に黒いものがぶら下がっている。よく見るとクロアゲハチョウのように見える。それにしても大きい。動植物に詳しい知り合いに聞き、後でわかったことだが、これはナガサキアゲハ(長崎揚羽蝶)で、交尾している最中だった。2匹1対だから大きく見えるのも当然だ。
専門書で調べてみると、ナガサキアゲハはアゲハチョウ科で、雄は全身が黒色、雌は雄よりも大型で、前翅基部(ぜんしきぶ)に三角形の赤い斑紋があり、後翅には白斑がある。幼虫はミカン類の葉を食葉にしている。チョウの名は生物学者のシーボルト博士が長崎で発見したことから命名されたという。また、あでやかな舞い姿を見せることから「空飛ぶ宝石」ともいわれ、本州、四国、沖縄に分布している。
私は一瞬、素人なりに地球環境の急速な変化で、昆虫たちの恋の季節が春から秋に変わったのではと思いながら、滅多に目にすることがない交尾の様子をアングルを変えながら何枚もシャッターを切った。公園の四季を撮影している私にとって貴重な資料を残すこととなった。
ナガサキアゲハが生息する杉村公園を少し紹介しておこう。個人所有していた広大な山林を1970年(昭和45)に橋本市に寄贈。寄贈者の名前を冠して杉村公園と名付けた。
公園は多くの野草や樹木が繁茂する自然公園を形成しており、公園内には民俗・美術工芸など約6500点収蔵、展示する橋本市郷土資料館、寄贈者の私邸を生涯学習施設にした松林荘や松林庵があって、学芸員が案内してくれる。また、野鳥や草木などの自然観察会や秋の菊花展などのイベント、ウオーキングなど市民の文化と健康づくりの広場としても活用されている。最寄り駅は南海高野線・御幸辻駅。
(写真と文=フォトライター北森久雄)