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戦争や平和=先ず読書~JR橋本駅・ゆかいな図書館

太平洋戦争の戦後70年・終戦記念日(8月15日)を控えて、和歌山県橋本市のJR橋本駅構内「ゆかいな図書館」=阪口繁昭(さかぐち・しげあき)世話人代表(87)=で、8月1日~同31日、戦争関連の本を並べた「戦争文庫」を開催。阪口さんは「今は戦争を語り継ぐべき、戦争体験者も少なくなった。せめて戦争関連の読書を通じて、戦争の悲惨さ、平和の尊さを噛みしめてほしい」と訴えている。
戦争文庫は今年で5回目。今回は図書館入口近くの本棚に「妻たちの二・二六事件」(澤地久枝)、「ノモンハンの夏」(半藤一利)、「人間の条件」(五味川純平)、「満蒙開拓青少年義勇軍」(櫻本富雄)など約500冊を並べた。
これらはすべて全国の善意の人々からの寄贈本で、今回も昨年に続き東京都江東区の女性から「東京大空襲を忘れない」(瀧井宏臣)など2冊が届けられ、「この本は子どもの頃に空襲体験した方々の証言集です。わかりやすい文章なので、小学生にも無理なく読んでもらえます」と丁寧な封書が添えられていた。
満蒙開拓義勇軍・シベリア抑留体験者であり、市内の小中高校で戦争体験を語り継いでいる阪口・世話人代表は、「この本は戦争文庫に置くとともに、必要に応じて私が小学校へ持参、子供たちの心に届くよう、大切に活用したい」と御礼状を送った。
また、館内の机上には戦時中、日本陸軍・防空監視哨(ぼうくうかんししょう)で、部隊長(陸軍中佐)を務めた故・石橋正道(いしばし・まさみち)さんが、敵機機種や飛行速度などの判断方法を記した「監視哨(かんししょう)ノート」や、家族に宛てた絵はがきなども展示している。
7月31日、本に図書館名のスタンプを押し、戦争文庫の準備作業に当たった世話人10人のうちの1人、県立紀北工業高校の元教諭・池永惠司(いけなが・けいじ)さん(85)は「戦争がいけないことは、誰しもが理解しているのに、今、なぜかしら戦争方向に傾いている気配。どうか読書を通じて、改めて戦争はどうして起きるのか、どうすれば未然に防げるのかを、しっかり考えてほしいです」と話した。
「ゆかいな図書館」は平成10年(1998)に開設。地元有志による世話人会が「通勤・通学客が気楽に利用できるように」と「貸出簿は作らず、図書の持ち出しは自由で、読み終えたら自主的に返却する」という信頼を原則とした方式で運営。
たまたま立ち寄ったことのある作家の五木寛之さんは、平成12年(2000)、日刊ゲンダイ連載「流されゆく日々」の中で「本好きな市民の善意を信じようという、小さな図書コーナーの発想がとてもいいと思った」と称賛している。
写真(上)は「戦争文庫」の机上の「監視哨(かんししょう)ノート」や絵はがきに見入る女性たち。写真(中)は戦争関連の図書が並ぶ書棚。写真(下)は故・石橋陸軍中佐が家族に宛てた絵はがき類。


更新日:2015年8月1日 土曜日 00:00

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