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「森林療法に学ぶ」上原教授~ひだまりクラブ記念講演
自然との共生を学ぶ拠点、和歌山県橋本市北馬場の「郷土の森 学習体験棟」で5月31日、これをサポートする橋本ひだまり倶楽部=石井敏明(いしい・としあき)会長=の「創設15周年記念講演会」が開かれた。講師は日本で最初に「森林療法」を提唱・普及させた東京農業大学地域環境科学部の上原巌(うえはら・いわお)教授で、科学的データを基にして、「自然は私たち人間を健康にしてくれます」と力説し、約50人の参加者に感銘を与えた。
橋本ひだまり倶楽部は、2000年4月、橋本市運動公園の北側の放置林を「里山」に整備し、「自然と住民がふれあえるように」と結成された。倶楽部員は、時には子供たちと一緒に、山林の手入れ、道やツリーハウスづくりを実践。小学生らに木材の間伐や木工技術、飯盒炊飯(はんごうすいはん)体験、ピザケーキづくりなどを指導。「自然との共生」の大切さを、体験させてきた。
上原教授は農学博士で、日本カウンセリング学会認定カウンセラー。国内外で森林療法の実態を調査・研究・実践し、「ジョン・レノンが愛した森 夏目漱石が癒された森」「森林療法のてびき~地域でつくる実践マニュアル~」など著書も多い。
この日、医療、福祉、教育、県、市関係者ら、とくに「森林療法」に関心の深い人たちが参加。上原教授は「森林療法に学ぶ」と題して、国内外の「森林と人々」の写真、調査資料などをモニターテレビで紹介しながら、約2時間にわたって講演した。
例えば、ドイツでは「森のようちえん」が約500か所もあり、そこでは、子供たちが自由に森を散策し、木を手で揺すったり、棒で叩いたり、声高々に歌ったり。雨の中では、傘を差すか否かも、子供の判断に任せている。しかも、森林は何も言わないので、それが「人間の感情を安定させ、子供たちの長期欠席を少なくし、五感を発達させている」と強調した。
また、森林療法とは「森林で運動や休養、作業を行い、森林と人間が健やかになること」と説明。「戸外、野外、森林で過ごすと、表情や言葉、行動に良好な変化が見られる」こと、さらに「疾患や院内生活で、隠れてしまった人間性の発掘や、記憶を引き出す効果がある」ことなどを、簡潔明瞭に述べて締めくくった。
途中、休憩時間には、参加者がお茶やお菓子を楽しみ、綺麗に手入れされた森林や、ツリーハウスなどを眺めながら、「やっぱり森林はええな」「静かで落ちつけるよ」などと、改めて自然の良さを感じ合い、石井会長は「これからも地域の人々、とくに子供たちには、自然と親しみ、健やかに育ってもらいたい」と話していた。
写真(上、中)は「森林療法に学ぶ」をテーマに講演する上原教授と参加者たち。写真(下)は橋本ひだまり倶楽部の「郷土の森 学習体験棟」。