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万葉人の〝竹の春〟しみじみ~〝飛び越え石〟近く

万葉人が往来した〝飛び越え石〟が残っていることで名高い、和歌山県橋本市隅田町真土の落合川の竹薮が、今、緑したたる〝竹の春〟を迎えていて、この季節特有のしっとりした詩情を呈している。
落合川〟は、和歌山・奈良の両県境を流れていて、両岸から突き出た二つの巨石の間を流水が通る。この巨石から巨石へ、万葉人が馬または徒歩で飛び越え、大和と紀州を往来したことから、大和では〝神代の渡し〟といい、紀州では〝飛び越え石〟と呼ばれてきたという。
竹薮は同川右岸にあり、今、約150本の竹が、幹も葉も青々と茂っていて、隣の色鮮やかな紅葉とは対照的な光景。まさに歳時記でいう秋の季語〝竹の春〟そのもので、風が吹くたびに、ざわざわと鳴り、日が照り翳りするたびに輝き、その竹藪の間から、小さく〝飛び越え石〟が見えている。
真土区では近くに観光客用トイレを設置。四季折々の花を植えて、草刈りをするなど、「真土・万葉の里」の環境をきれいに保全。観光客は自ら〝飛び越え石〟を渡って、万葉人の〝竹の春〟を体感しながら、「ここは絵にも、音楽にも、詩にもなる」と喜んでいる。
この〝飛び越え石〟をこよなく愛した万葉学者で大阪大学名誉教授の犬養孝(いぬがい・たかし)さん(故人)は、かつて「この〝飛び越え石〟は、どこにもない貴重な文化財であり、河川開発から守ってほしい」と力説。この意を受けて、市民有志と共に守ってきた「万葉の会」副会長の奥村浩章(おくむら・ひろあき)さんは、「犬養先生と真土区の皆さんのお陰で〝飛び越え石〟を残すことができました。ぜひ遊びに来て、万葉人の気持ちを味わってください」と言っている。
写真(上)は〝飛び越え石〟が小さく見える落合川の緑したたる竹薮。写真(中)は万葉人が往来した落合川の〝飛び越え石〟。写真(下)は紅葉の隣に茂る落合川の竹藪。


更新日:2014年11月16日 日曜日 00:00

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