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順教尼も天から讃美~橋本の支援学校生の作品展~
両腕のない障害を克服し、口筆で書画を描いて「障害者の心の母」と慕われた、大石順教尼(おおいし・じゅんきょうに=本名・よね=1888~1968年)ゆかりの旧萱野家(大石順教尼の記念館=和歌山県九度山町九度山1327)で、橋本市の県立きのかわ支援学校の生徒たちが制作した「パイル織物」や「さをり織り」作品などを紹介する秋季特別企画展が開かれている。きっと順教尼も天から讃美してくれそうな秀作ぞろいで、萱野正巳(かやの・まさみ)館長は、「支援学校生の当館初の特別企画展です。ぜひ、ご覧ください」と呼び掛けている。10月24日(金)まで。入館無料。
同校は、肢体不自由や知的障害の両科を併設した特別支援学校で、同展では中学部、高等部の生徒たち約40人が各自1点ずつ出展した。
旧萱野家の玄関ロビーには、高等科の3人がパイル織物の端切れを張り合わせて共同制作した「九度山橋の見える風景」(縦90センチ、横135センチ)が飾られ、雨引山や紀の川など郷土風景が鮮やかに表現されている。
また、和室(8畳の間)には、さをり織りのバッグ、小物入れ、ブローチ、自画像の水彩画、紀の国わかやま国体のマスコットキャラクター〝きいちゃん〟の折り紙アート、陶芸のシーサー、椀(わん)などが並び、会場はほのぼのとした雰囲気。
作品を鑑賞したトンボ玉作家の窪田美樹(くぼた・みき)さん(50)は「いずれの作品も、緻密に作られ、色合いも綺麗です。とても自由で、素直な心が表れていて、素敵です」と讃えていた。
九度山町の田口勝(たぐち・まさる)教育長は「この記念館は、順教尼の作品が沢山、常設展示されているし、出来れば当館の一室を生かして、障害者の作品発表の拠点にしたい。県内には計12校の支援学校があり、今後、当館での作品展開催を呼びかけるとともに、常設展も考えたい」と話し、萱野館長も「素晴らしい発案」と相槌を打っていた。
順教尼は大阪・道頓堀生まれ。17才の時、養父の狂乱により、両腕を切り落とされたが、後にカナリアがクチバシでヒナに餌を与えている姿を見て、「両手がなくても、物事はできる」と悟り、書画の道に邁進した。
高野山で出家得度した順教尼は、「菩提親」でもあった萱野家に逗留(とうりゅう)、京都・山科の可笑庵(かしょうあん)で、80歳の生涯を閉じるまで、書画の道を究め、身体障害者の社会復帰事業に尽力した。
同館の開館時間は午前10時~午後4時半(入館は同4時まで)。休館日は10月6日(月)、同14日(火)、同20日(月)。
場所は南海高野線・九度山駅から徒歩7分。問い合わせは旧萱野家(電話=0736・54・2411)。
写真(上)は旧萱野家に飾られた和歌山県立きのかわ支援学校生の作品の数々。写真(中)はパイル織物の端切れで制作した大作「九度山橋の見える風景」。写真(下)は「素敵に作品」と語る萱野館長。