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小説「兄貴」放送~FMはしもと~戦時下の橋本舞台

終戦記念日を控えて、和歌山県橋本・伊都地方の地域放送局「FMはしもと」=向井景子(むかい・けいこ)社長、橋本市東家=は、8月11日、戦時下の疎開先・橋本を舞台にした、母子の暮らしと哀感を描いた小説「兄貴」=今江祥智(いまえ・よしとも)氏・作=をラジオドラマ化し、同18日(月)から半年間、約50回にわたり、長編連続番組として放送する、と発表した。中野豊信(なかの・とよのぶ)報道部長(66)は「このドラマを通じて、戦争の悲惨さ、理不尽さ、人々の逞しさを、しっかり伝えたい」と張り切っている。

小説「兄貴」のあらすじは、昭和20年(1945)春、夫を病気で亡くし、長男を兵隊にとられた母が、さらに大阪大空襲で焼け出され、二男・洋次郎(ようじろう)、三男・洋(ひろし)兄弟(中学生)を連れて、故郷・橋本に疎開。

食糧難の中、母は初めての畑仕事、洋次郎は動員先での工場労働、洋は紀の川で魚とりをするなど、母子協力しての必死の生活。灯火管制の厳しい中、橋本橋たもとの紀の川に潜み、空襲から身を守ったかと思えば、米軍機による橋本駅・機銃掃射の惨劇も起きる。

当時、中学2年生だった今江氏が、約2年余りの橋本での疎開生活を、母の目線で描いた物語で、「古佐田」や「東家」などの地名、丸山公園など古里の情景も描かれ、とくに橋本市民には、たまらない魅力的作品。

中野部長が演出、一色洋輔(いっしき・ようすけ)さん(52)が音楽を担当。FMはしもとで音楽、トーク、ニュースを担当している桝井由紀(ますい・ゆき)さん(57)が、ナレーションと主人公の母など登場する全女性、中野部長が洋次郎・洋など登場する全男性をそれぞれ演じる。

桝井さんは、KBS京都の元アナウンサーで、子供の頃にはNHK児童劇団でドラマ出演経験もあり、「お母さん役を中心に、登場人物の心情を、丁寧に表現していきたい」と話した。

この放送は、8月18日=午前9時45分~同10時=に開始。毎週日曜日の午後7時からは1週分をまとめて放送。普段は「はしもとワイドモーニング」(月、火、木、金曜日の午前8時~同10時の生放送)の中で、連続番組として放送する。放送周波数は81・6メガヘルツ。

FMはしもとは、昨年8月、終戦記念特別番組「橋本駅 機銃掃射の記憶」(1時間半)を放送し、同11月には同番組CDを橋本市教委に寄贈、教育現場で活用されている。

中野部長は「昨年秋、この小説・兄貴に出会い、戦時下の疎開生活、橋本の地名の数々、そこに〝もう一つの戦争〟があったと、大きな衝撃を受けました。これはぜひ終戦記念番組の続編にしたいと決心し、今江様にお願いしたところ、即座にラジオドラマ化を快諾していただきました」と感激。「皆さんとともに〝もう一つの戦争〟を心に刻んで、次世代に戦争の悲惨さと、平和の大切さを伝えていきたい」と語った。

今江氏は昭和7年(1932)、大阪生まれ。同志社大学を卒業後、中学校教諭を経て、編集者、児童文学者、作家。「兄貴」のほかに「ぼんぼん」「でんでんだいこいのち」など著書多数で、児童文学者協会賞、野間児童文芸賞など受賞。京都在住。

写真(上)は小説「兄貴」をラジオドラマ化して演じる桝井さん=左=と中野部長。写真(中)は今江祥智さん作の小説「兄貴」と主人公の母を演じる桝井さん。写真(下)は二男、三男を演じる中野部長。


更新日:2014年8月12日 火曜日 00:00

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