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橋本の方言など満載~単行本出版~林邦有さん採集

和歌山県立橋本高校の元音楽教諭・林邦有(くにずみ)さん(83)=橋本市御幸辻=が、郷土の言葉を採集してまとめた単行本「橋本周辺のはなしことば」が文芸社(東京・新宿区)から出版された。林さんは最近、糖尿病で目が見えないが、妻・好子さん(83)の協力を得て見事上梓(じょうし)され、「消えていく郷土の言葉を残せてよかった。改めて方言の良さを感じてください」と言っている。
橋本市は、旧高野街道と旧大和街道が交差し、国道24号線と同371号線が交差する、高野山麓の紀の川流域のまち。古くは万葉人が真土山から和歌の浦などへ往来し、天正年間には、応其上人が紀の川に架橋、塩市を開き、まちは繁栄。もちろん里山があり、稲作り、柿作り農業が盛んで、独自の方言が生き続けてきた。
ところが20数年前、新しく開発された新興住宅地の小学校・校歌の作曲を頼まれ、学校を訪れた際、子どもたちの言葉に衝撃を受けた。都市部から来た子どもの言葉と、地元の子どもの言葉が合わさっていて、かつての〝のんびりした紀見の子の言葉〟や〝ほんわかとしたお年寄りの言葉〟が聞こえてこない。「このままでは郷土の言葉が消えてしまう」と考え、地元の老人会の集まりなどに積極的に出向いて、郷土の方言そのものと、方言の抑揚などを採集。
これを平成10年(1998)から14年(2002)にかけて、加筆・修正を加えながら「橋本周辺のはなしことば」(B5判)を自費出版。これが大きな反響を呼び、和歌山の図書館や東京の国立図書館でも保存されている。今回の「橋本周辺のはなしことば」は、さらに加筆・修正を加え、携行しやすい単行本(251ページ)として出版された。
例えば「あがいな話(あのような話)」、「いきもて話しょ(歩きながら話しよう)」、「うたとい(うるさい)」、「えねぼさん(いい女房)」、「おいやん(おじさん)」、「かえこと(交換)」、「きこえやん(聞こえない)」など、五十音別に意味付きで掲載。その抑揚については音楽家・林さん独自の記号で表している。
また、橋本市妻の日本板画院同人・巽好彦さんが協力。本の表紙には「高野街道」(紀見峠の古い町並み)、中身には「三軒茶屋の渡し場跡」「妙楽寺の鐘楼門」「紀の川畔」「秋祭り」(舟楽車=ふなだんじり)など、計11枚の郷土の版画で飾っている。
林さんは「今回は、目が見えなくなったので、妻にゲラ刷りを読んでもらい、長い月日をかけて、校正しました。言葉の採集には、田中治先生(医師)に沢山の植物や魚の呼び名を提供してもらうなど、大勢の方々の協力をいただきました」と感謝。「どうかこの本を手元に置いて、いつまでも古里の言葉を大切にしてほしい」と語った。
林さんは和歌山児童合唱団や地方合唱団の指導指揮、音楽教育功労賞(全国)や和歌山県教育功労賞、橋本市文化賞など受賞。レポートには「金剛流ご詠歌・和讃の5線への採譜」「根来の子守唄の採集と採譜、考察」「橋本の秋祭り・だんじり囃子採譜・考察」「伝えたい子供のころの遊びと遊び歌」などがある。
本の購入や問い合わせは「本と文具ツモリ」(橋本市御幸辻118の1、紀見店=電話0736・32・9915)(橋本市神野々566、西部店=電話0736・32・5153)へ。
写真(上)は出版された単行本「橋本周辺のはなしことば」を披露する筆者の林さん(左)と版画で飾った巽さん=林さん方の応接間で。写真(中)は単行本「橋本周辺のはなしことば」。写真(下)は今回出版の元となった林さん自費出版のB5判の「橋本周辺のはなしことば」。


更新日:2014年1月9日 木曜日 01:49

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