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〝利き酒〟楽し酒蔵見学~初桜酒造(国登録文化財)
日本酒「高野山 般若湯(はんにゃとう)」を醸造する、和歌山県かつらぎ町中飯降85、初桜酒造株式会社(笠勝清人社長)で、2月10日、国の登録文化財「酒蔵」の見学会が開かれた。同地方や近府県から計75人の日本酒ファンらが訪れ、笠勝社長や但馬杜氏から醸造過程の説明を受けたり、今年初めての搾りたての新酒を味わったりした。
同社は1866年(慶応2)に高野山麓を流れる紀ノ川畔に創業。高野山では〝飲酒禁制〟だったが、弘法大師は「塩酒一盃(おんしゅいっぱい)これを許す」と、酒の効用を認め、山上では酒を〝般若湯〟と呼んで愛飲された。昔は馬の背に酒樽(さかだる)を乗せ、山麓から山上まで運んでいたという。
同社は、弘法大師が高野山開創の際、神領を借りるなど世話になった丹生都比売(にうつひめ)神社のある同町天野の、名産〝天野米〟と高野山麓の伏流水を使用。笠勝社長と但馬杜氏が純米、純米吟醸酒を造り、橋本・伊都地方や大阪、東京へ出荷している。
日本酒は、白米を蒸して麹(こうじ)を造り、この麹で蒸し米を糖化しながら、酵母を培養し、酒母をつくる。これを仕込んで、もろみを仕立て,並行複発酵法(へいこうふくはっこうほう)で、高いアルコール分のもろみを造り、これを搾って出来上がる。
この日、笠勝社長と但馬杜氏は、見学者を午前と午後の2回、各2班に分けて「酒蔵」に案内。棟も梁も柱も、どっしりとした歴史の重みを感じさせる中、米と水を浸す〝浸漬場(しんせきば)〟や、米と麹(こうじ)で酒母をつくる〝酒母場(しゅぼば)〟、蒸し米を寝かせる〝麹室(こうじむろ)〟、昔、使っていた〝蒸し釜(かま)〟などについて、丁寧に説明した。
この後、「高野山 般若湯」と染め抜いた、紺のハッピ姿の従業員らが、搾りたての新酒をコップについで、見学者に〝利き酒〟をしてもらった。
京都から見学に来たという夫婦は「さすがにうまいで」「いい香りがする」とにっこり。
笠勝社長は「昔ながらの〝酒蔵〟の伝統を肌で感じていただき、新酒のうまさも味わってもらえました。だんだん遠方から見学に来られる方々が増えてうれしいです。今年の酒は、やや辛口に出来上がりましたが、味は薄口で、おいしいですよ」と自慢していた。
紀ノ川の上流の同地方の酒は、昔は「川上酒」と呼ばれ、大正から昭和初期にかけて、33軒の酒蔵があった。〝灘・伏見〟が酒どころとして脚光を浴びる一方、酒の量産が進むにつれて、〝川上酒〟の廃業が相次ぎ、今では同社1軒のみとなっている。
酒蔵見学会は、2月17日(日)にも、午前10時からと午後2時からの2回開かれる。午前の定員は40人、午後の定員は30人で、見学は無料。申し込み・問い合わせは同社(0736・22・0005)へ。
写真(上)蔵の床に寝かされた麹(こうじ)の説明を受ける見学者たち。写真(中)は夫婦で〝利き酒〟を楽しむ風景も。写真(下)は笠勝社長から酒蔵の説明を聴く見学者たち。