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〝紀州へら竿〟国の伝統工芸品に…竿師「一層精進」
和歌山県橋本市の紀州製竿(せいかん)組合(田中和仁組合長)の〝へら竿師〟が作っている〝紀州へら竿〟が、国の伝統的工芸品に指定されることがわかった。経済産業省ホームページで情報発信しており、田中組合長は「昭和56年(1981)以来、先輩から後輩へと、紀州へら竿の歴史的調査を続けてきたが、その伝統がついに認められました」と喜んでいる。
同市は日本一の和竿の産地で、同組合には30~80代のプロの竿師45人が加盟。毎年、高野竹を使った和竿3000~3500本を全国に出荷し、全国シェア90パーセントを占める。
紀州へら竿は、竹伐りや、竹をつなぐ生地組み、竹を真っ直ぐに伸ばす火入れ、漆(うるし)塗り、穂先削り、握り部分の装飾、仕上げ塗り…と丹精込めて作られる日本の工芸品の一つ。
国の{伝統的工芸品}指定を受けるには▽100年以上変わらない製法であること▽作り方は手工芸であること▽原材料は天然物であること▽30人以上の工芸家が活動していることなどの条件を満たす必要がある。
そこで、同組合のへら竿師たちは、昭和56年頃から、紀州へら竿の歴史について調査を開始。その結果、先ず昭和63年(1988)に和歌山県から歴史、技法、品質などを認められ、県の「伝統的工芸品第1号」に指定された。
その後も「国指定」を目指し、田中組合長らが和歌山県職員や橋本市職員の協力も得て、綿密な調査を継続した結果、かつて橋本市の若者たちが、大阪のへら竿師「竿正(さおしょう)」=溝口象二さん=1857年(安政4)~1922(大正11)年=から〝和竿〟の作り方を学び、今の橋本の伝統産業となったことなど、歴史的な証明ができたという。
経済産業省ホームページでは、産業構造審議会伝統的工芸品産業分科会指定小委員会の議事要旨の中で、伝統的工芸品(紀州へら竿)の新規指定について記され、「委員長が指定する同分科会に意見具申することを各委員に諮り了承された」などと、発信している。
紀州へら竿は、3月に「伝統的工芸品」に指定される予定で、紀州漆器(しっき)、紀州桐箪笥(きりだんす)に次いで3番目となる。
橋本市では、同製竿組合や商工会議所などによる〝実行委員会〟が、10年前から毎年、HERA1(全国へらぶな釣り選手権)大会を開催。橋本は、今では名実共に「へらぶな釣り」の本場となっている。
田中組合長は「私たちは懸命に紀州へら竿の歴史調査を続けてきましたが、仁坂・和歌山県知事や木下善之・橋本市長、国会議員の方々も、その素晴らしさを十分評価してくれました」と感謝。
また、「6月頃には皆さんと相談し、HERA1大会の開催場所である〝隠谷池〟で、〝国の伝統的工芸品〟指定を祝う〝へらぶな釣りの祭典〟開催を検討、さらに優れた紀州へら竿作りに精進したい」と話した。
写真(上)は100年以上も前に作られた「竿正」製作のへら竿を披露する田中組合長。写真(中)は橋本市の隠谷池で開かれたHERA1大会の風景。写真(下)橋本駅前の観光案内所で販売されている紀州へら竿。