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万葉歌人ゆかり〝妻の杜〟人気…若者ら良縁祈願

万葉歌人が「妻がほしい」という和歌を詠んだことから、その舞台となった和歌山県橋本市妻の「妻の杜(もり)」が、良縁の社(やしろ)として脚光を浴びている。この秋、境内の隅には、ちょうど〝高砂百合(たかささごゆり)〟という名の花が開花し、将来のめでたさを演出している。
「妻の杜」は、JR・南海「橋本駅」から東へ徒歩約10分以内、静かな住宅街の中にある。国道24号沿いの旧大和街道の南側で、14段の石段を登ると、約200平方メートルの境内があり、椋(むく)の巨木の陰に、小さな祠(ほこら)と大きな歌碑が並ぶ。歌碑には「紀の国に 止(や)まず通わむ 妻の杜 妻寄(よ)しこせね 妻といひながら」(坂上忌寸人長=さかのうえのいみきひとおさ)と刻まれ、意味は「紀の国に絶えず通おう 妻の社よ 妻を与えてください 妻という名なのだもの」と、切々な気持ちを込めている。
橋本万葉の会が1999年の万葉まつりの際、元橋本中学校教諭の大上継代さんに揮毫(きごう)を頼み、郷土出身で大阪市に住む松下詔次さんの寄付で、庵治石(あじいし)製の歌碑を建立した。
近くには縦横1・5メートル程の絵馬掛けがあり、ハート型の絵馬(木製)約80枚が風に揺れて、かたかたと鳴っている。
橋本市観光協会(橋本駅前のはしもと広域観光案内所)の話では、最近は、他府県から来た観光客が、駅で電車待ちの際、観光案内所を訪れ、「近場に1時間ほど楽しめる名所・旧跡はありませんか」と尋ねるので、案内所では「縁結びの〝妻の杜〟か、応其上人を祀る応其寺へどうぞ」と紹介。〝妻の杜〟へは毎月約30人が訪れているという。
万葉の会副会長で、地元の大弥工芸社長の奥村浩章さんは昨年、ハート型の板に「良縁祈願 妻の杜」と書き、郷土の版画家・巽好彦さんの作品「妻の杜風景」や、和歌全文を入れた絵馬を制作して、案内所に置いたところ、飛ぶように売れたという。
また、8月には橋本商工会議所主催の〝婚活事業〟の一環として、
参加者約30人にハート型絵馬を進呈したところ、一部の男女は〝妻の杜〟に掲げて良縁を祈願。あとの人たちも、改めて掛けに出直すという。
ちょうどこの季節、境内の隅には〝高砂百合〟が満開。その花言葉は威厳、無垢、純潔。最近まで結婚式で「高砂や この浦舟に 帆を上げて…」と謡われた謡曲「高砂」の名を戴いている百合である。
また、近くの絵馬掛けの絵馬には、「優しくて思いやりのあるカッコイイ人と御縁がありますように」「私のことを一番に思ってくれる、優しくて心のキレイな人と、早く出会って結婚できますように」などと、純真無垢な心で、祈願文をしたためている。
観光協会の南出幸代さん、山迫理恵子さんは「電車待ちには、ちょうどいい場所にありますよ」と、にっこり笑い、奥村さんは「良妻をめとりたいと思った万葉人の心をしのんでください」と言っている。
問い合わせは同案内所(電話・FAX 0736・33・3552)。
写真(上)は橋本駅近くにある〝妻の杜〟。写真(中)は〝妻の杜〟にめでたく美しく咲いた高砂百合。写真(下)は〝妻の杜〟境内に掲げられたハート型の絵馬。


更新日:2012年9月11日 火曜日 14:47

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