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熊野川の〝アユ工房〟復活…橋本の森岡さん

紀南地方の天然アユなどを、紀北地方の人たちに食べてもらおうと、元和歌山県の橋本市職員・森岡康次さんが同県新宮市熊野川町に設けた作業所が、昨年秋の台風・豪雨で全壊した。しかし、森岡さんは今年、地元農家の協力を得て、近くの空家を作業所に改造、川漁や川魚販売を見事に復活させた。森岡さんは「確かに紀南地方は大きな災害を受けましたが、皆さんと一緒に再出発。応援をお願いします」と言っている。
もともとアユ釣りを趣味にしていた森岡さんは、「熊野川のアユは川底の苔(こけ)がいいので、それを食べるアユも抜群にうまい」ことや、「川漁師はアユを取っても、家族で食べるか友人知人、隣近所に配っているだけである」ことなどに着目。
「このままでは、もったいない。このアユを郷土の橋本・伊都地方に持ち帰れば、喜こんで食べてもらえる」「それが販路となれば、川漁師の生活経済の一助にもなる」と考え、一昨年春、定年を待たずに市役所を退職、作業所を設けた。
6月~11月のシーズン中、毎週水、木、金、土曜は、熊野川でアユの友釣り、竿釣りに明け暮れ。アユの釣果はシーズン中に約4000匹、手長エビは筒の仕掛けで、1回約100匹にのぼった。月、火曜日は橋本に戻り、商工団体や料理店に販売し、仕事は軌道に乗っていた。
ところが昨年9月、台風・豪雨に見舞われ、熊野川がはんらん。同川と赤木川の合流地点から約500メートルの低地帯にあった作業所は、商品とともに全壊。悲嘆にくれる森岡さんに、救いの手を差しのべてくれたのは、近くの農家の70代の男性だった。「うちの空家でやり直したらどうか」という親切に甘えて、空家の台所を作業場に改造。今年4月20日、新宮保健所から「食品営業許可証」を受け、改めて仕事を始めた。
アユは友釣り、ウナギは竹筒で生け捕りし、川漁師からも入手。アマゴは奈良県野迫川村の漁協で仕入れる。これを真空パック詰めにして冷凍。これを橋本市矢倉脇の「いやしの湯 紀伊見荘」や、奈良県五條市の料理店などに届けている。
アユは七輪で焼く、塩焼きにする、甘露煮にする、懐石料理にする、などして提供。顧客からは「さすがに熊野川のアユはうまい」と、ウナギやアマゴとともに好評を博している。
ただ、森岡さんは「あの台風により、川底の玉石が砂に埋まって、エサ不足となり、手長エビは不漁です。アユの成育にも影響しますので、今はひたすら自然回復を祈っています」と話した。
一方、森岡さんに空家を貸した農家の男性は、農作物の出荷先のスーパーマーケットが洪水で全壊。やはり困り果てていた。そこで森岡さんは、全壊した自分の作業所を撤去し、地主の承諾をも得て、男性に使ってもらうことにした。
男性はそこでテント張りの「青空市場」を開き、自分の田畑でとれた新鮮なトマト、トウモロコシ、キュウリ、茄子などを直販。地元の人たちにも喜ばれ、順調に再スタートを切っている。
森岡さんは「紀南の人たちは、このように頑張っています。紀北の方々には、ぜひ、力強い応援をお願いします」と訴えている。
写真(上)は熊野川の天然アユと森岡さん。写真(中)は早朝から熊野川のアユ釣りに挑む森岡さん。写真(下)は新しい作業場で川魚の調理に取り組む森岡さん。


更新日:2012年8月20日 月曜日 20:28

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