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順教尼の生涯がマンガ本に~京都で完成発表会
大石順教尼の生涯を描いた「マンガ・祖母(ばば)さまのお手々はだるまのお手々」の完成発表会が、京都国際マンガミュージアム多目的ホールで開かれ、京都や和歌山、宮城などから、順教尼を慕う人たち約200人が詰めかけた。
大石順教尼(本名・大石よね=1888~1968)は、今から107年前、大阪で起きた「堀江の6人斬り」によって瀕死の重傷を負い、わずか17歳という若さで両手を失うが、その後、旅の巡業中、カナリアがヒナを育てるのを見て、口に筆を執ることを思いつき、独学で書画を勉強。多くの作品を描き残した。
中でも紺紙に金泥で書いた口筆般若心経が、日展書道部に入選している。45歳で出家して得度、法名を「順教」に。3年後には京都山科勧修寺境内に身体障害者福祉相談所を建て、障害者のための福祉活動や、女性解放運動に努めた。
マンガではこれらを3章に分けて紹介。明るくて、前向きで、ユーモアを大切にしながら、明治、大正、昭和の時代を生き抜いた順教尼の姿を鮮明に伝えている。
また、同書には数々のエピソードと語録、歌人・与謝野晶子らとの交遊録、年表など8ページにわたって収録している。大石順教尼かなりや会発行。京都精華大学推進室編集。作画は浜田麻衣子さん。A5判106ページ。定価1000円(税込み)。九度山町の大石順教尼記念館(電話0736・54・2411)などで発売しているが、書店扱いはしていない。
発表会1部では、関係者の挨拶の後、孫の大石雅美さんが、祖母順教の心、生き方などを紹介。続いて赤坂博・京都精華大学理事長や管野正巳・大石順教尼記念館長ら5人によるパネルディスカッション、オペラシアターこんにゃく座の副代表で歌役者の大石哲史さんが、順教尼作詩の春の踊り「扇持つ手にも唄にも恋という言葉覚えぬ十六の頃」など、14編をマリンバの演奏で歌い、場を盛り上げた。できたてのマンガ本は京都市教育委員会や九度山町などに贈られた。
また、発表会2部の記念上映会では、少年南正文が製材業を営む父の手伝いをしている時、機械のベルトに巻き込まれて両腕を失い、絶望の淵にあった時、両腕を失った順教尼の生き方に接して弟子入り。後ろ向きだった心を大きく転換し、日本画家として邁進していく様子を描いた入江富美子監督のドキュメンタリー映画「天から見れば」(94分)を上映した。
写真(上)は完成したマンガ本の表紙。写真(中)はマンガ本の1ページ。写真(下)は発表会に集まった人たち。
(フォトライター 北森久雄)