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明治の〝葛城館〟平成の大修復へ…人力車移動
和歌山県橋本市高野口町のJR和歌山線・高野口駅の駅前で、木造3階建ての威容を誇る、国の有形登録文化財「葛城館」(当主=4代目・大矢武さん)が、老朽化のため修復工事を行うことになった。橋本市教育委員会は4月4日、同館1階の土間に飾られていた人力車1台を、地元の同市産業文化会館に移し、工事の準備に備えた。
葛城館は明治後期の建築とされる、入母屋作りの旅館。延べ323平方メートルの広さで、3階本屋根には千鳥破風と軒唐破風が取り付けられ、銅版葺き庇(ひさし)、前面総ガラス張り。
玄関上がりがまちには、長火鉢や「高野山金剛峯寺御用達」と、高野山管材桧板の「和歌山県庁指定旅館」の看板、松の絵の大衝立(ついたて)があり、階段は赤いジュータンを敷設。旅館業は平成6年以降、休業しているが、往時のにぎわいぶりを感じさせる。
また、向いの高野口駅は、明治34年に開通した紀和鉄道の、当初、名倉駅として開設。2年後に高野口駅と改称された。高野口駅で待機する人力車は、明治40年に235台、大正2年には283台に増加。当時の町の勢いをしのばせる。
同館の話では、老朽化のため、場所によって柱が最大10センチ下がり、建物全体が東側にやや傾斜。これを本来の姿に修復するという。総工費約3100万円(うち国の補助金170万円)で、近く着工、来年3月末までに完成させたい意向。
大矢さんの長男・裕さん(50)は「人力車は平成5年に旧高野口町が製作し、この旅館1階に飾ったもので。このたび、修復工事に伴い、産業文化会館で保管されることになりました」と説明。「この旅館には、観光の人たちが〝見学したい〟とよく訪れます。私たちの生活空間以外については、自由にご覧いただいています」と話した。
写真(上)は修復されることになった国の登録文化財「葛城館」。写真(中)は葛城館の修復のため産業文化会館へ移される人力車。写真(下)は歴史の重さを感じさせる「葛城館」の大看板。