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〝飛び越え石〟の竹薮きれいに…橋本市が景観保全

万葉人が往来した〝飛び越え石〟が残っていることで名高い、和歌山県橋本市真土(まつち)の〝落合川〟で、1月26日、これまで鬱蒼(うっそう)と茂っていていた竹薮が、美しく間伐され、〝飛び越え石〟そのものが、竹薮のこちら側からも眺められるようになった。橋本市商工観光課は「今年度中に〝飛び越え石〟など、市内5か所の名所旧跡を整備し、観光客に気持ちよく過ごしてもらいます」と言っている。
〝落合川〟は、和歌山、奈良の両県境から、紀ノ川にそそぎ、〝落合川〟の両岸から大きな石が1つずつ、川の中央に突き出ていて、これを〝飛び越え石〟と言う。万葉時代には、貴族や庶民が、この石を飛び越え、大和、紀州をひっきりなしに往来した。
万葉人の歌に「白栲(しろたえ)に にほふ信土(まつち)の 山川(やまがわ)に わが馬なづむ 家恋ふらしも」(作者未詳)という1首がある。これは「信土山の川で私の乗る馬が行き悩んでいる。家人が私を思っているらしい」」という意味。
とくに、万葉学者で大阪大学名誉教授だった犬養孝さん(故人)が、この〝飛び越え石〟の素晴らしさを人々に語り、その説得力もあって、今では紀北地方でも指折りの〝観光ポイント〟となっている。ところが〝落合川〟の川沿いには、鬱蒼とした竹薮があり、枯れた竹が次々と倒れて、年を重ねるごとに、竹組みをつくりし、川を覆い、堰をなして、無残な光景をさらしていた。
そこで、橋本市は住民と相談し、今年度、環境景観保全整備事業として、同市シルバー人材センターに整備を委託。約10日間をかけて竹薮を整備。〝飛び越え石〟周辺の竹薮は、きれいに間伐され、今は約150本の竹の間から、〝飛び越え石〟が見渡せるほどに整備され、それより上流約100メートル間の竹薮も、雑木類を残して、ほとんどすべてを伐採。心地よい景観を取り戻した。
同商工観光課の話によると、同市が今年度、観光景観保全整備事業(約800万円)の対象としたは▽飛び越え石周辺▽杉尾の巨石(国の音風景100選)周辺▽国城山頂南側の〝黒河道(くろこみち)〟周辺▽玉川峡の〝やどり温泉いやしの湯〟周辺▽高野口町九重の一本杉ハイキングコース周辺▽信太神社近くの嵯峨谷川沿い約1キロの5か所。
このうち〝飛び越え石〟と〝杉尾の巨石〟周辺は整備を終了し、他は今年度中に整備を終える予定。同市商工観光課は「とりあえず〝飛び越え石〟や〝杉尾の巨石〟については、観光客に気持ちよく過ごしてもらえるようになりました。観光地の景観は、皆さんとともに守りたいと思います」と話した。
写真(上)は〝飛び越え石〟から見て、間伐できれいになった竹薮。写真(中)は間伐された竹薮から見えるようになった〝飛び越え石〟。写真(下)は竹薮など〝落合川〟を整備する橋本市シルバー人材センターの人たち。


更新日:2012年1月26日 木曜日 21:38

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