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感激〝学びの森〟初の見学会~田中先生ありがとう
今年85歳の内科医師が、15年がかりで植林した、全国でも珍しい和歌山県橋本市向副の紀ノ川河川敷にある「ふるさと学びの森」で、9月23日、「第1回見学会」が開かれた。約350種類の木々が生い茂り、これを植栽した同市隅田町中下の田中治さんは、「大勢が見学に来てくれた」と大喜び。森を見てまわった市民ら約50人は「植物の勉強や、自然との共生を知る最適の森」と感激し、「この森をまもり、児童生徒たちに、伝承してほしい」と話した。
この学びの森は、南海高野線の紀ノ川鉄橋のすぐ東側。東西約100メートル、南北約40メートルの河川敷に、国内外の針葉樹、広葉樹などを植栽。1本1本の木々に「名札」をぶら下げ、下草を刈って、中央の東西に通りを設けている。
和歌山県自然保護監視員の田中さんは、「植物を学びたい」という人々を、橋本・伊都地方の山々に案内してきたが、「1か所で学べるように」と発案。河川敷利用の国の認可を得たうえ、地元の〝中将姫旧跡保存委員会〟や自然を愛する市民から贈られた苗を植栽。知り合いの元銀行員・山下紘一さん(59)に、水やり、下草刈りなどをしてもらいながら、完成させた。
今年8月、「この森を大切にし、森で楽しく過ごそう」という、郷土の植物研究家や植物ファンらが集まり、「ふるさとの森を楽しむ会」を設立。今回、初の見学会を企画・主催した。
この日、元県立自然博物館学芸員の山元晃さん(現・紀伊風土記の丘)が、ゆっくりと丁寧に参加者を案内。羽子板の羽の玉にするムクロジの木や、就職時に植えると退職時に結実するので〝年金の木〟と呼ばれるぺカンの木、ミカン畑の防風林に植えられているヒョンの木など、それぞれの特徴について説明した。
参加者らは、柿のような形の、小さな実をつけた木を見ては、「盆栽にいいな」と目を細めたり、キササゲの実にふれては「ふしぎ、毛が生えている」と驚いたり。また、落下して腐敗したカリンの実を見ては、「すごい、これで芽がでるの」と首をかしげていた。
県立橋本高校1年の一之澤万佑さん(16)は、「私は苔(こけ)の研究を始めていて、この森では約10種類の苔を見つけました」と、思わぬ収穫に、にっこり。母の嘉子さん(48)は「ここに来ると沢山の木々に出会えます。長い間、丹精込めて、よくこんなに育ててくださいました。今後はこの森を大切にし、とくに小、中、高校生に見てほしいですね」と話した。
今は足腰が弱くなり、手押し車で歩いている田中さんは、「私と同じ植物愛好家が、この〝森を楽しむ会〟を発足させてくれたし、きょうは、私の尊敬する〝歩く博物館〟と呼ばれる山元先生のご案内で、大勢の皆さんに見てもらえました。こんなにうれしいことはありません」と喜んでいた。
「ふるさと学びの森」の入場は無料。最近は大阪府河内長野市や奈良県五條市からも見学に訪れている。問い合わせは「ふるさと学びの森を楽しむ会」事務局長・山本良和さん(橋本市中央公民館長)(0736・32・0034)。