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昭和の古井戸~地震断水も平気、橋本の住宅地
飲料水にも利用できる「昭和の古井戸」が、和歌山県橋本市古佐田に残っている。これまで、どんな干ばつの際にも、井戸水がかれたことがなく、地元住民らは、「万が一、大地震が起きて、上水道が断水になっても、大丈夫です」と喜んでいる。
ここはJR南海「橋本駅」の北西側にある「庚申(こうしん)山」の山頂付近の閑静な住宅地。古井戸は昭和初期に築造されたらしく、内部は頑丈な石積み構造になっている。推定で水深は約10メートル、地上から水面まで約10メートル。当初、取り付けられた手動式ポンプは故障したままだが、その脇に電動式ポンプを設けてあり、4ヵ所の蛇口の栓をひねると、モーターが作動して、水がほとんど際限なく、出てくる仕組みだ。
地元からの要望で昨年9月、社団法人・和歌山県薬師会医薬品・公衆衛生検査センターが行った水質検査結果は、「水質基準に適合する」とし、飲料水にも利用できるという。
古井戸も洗い場も、全体が鉄骨組みの上屋で覆われ、上屋に掲げられた看板には、1979年10月に改築したとあり、当時の「井戸仲間」12人の名前が書かれている。また、「井戸仲間申合(もうしあわせ)規約」の題で、「井戸水の使用者は共同であることを常に念頭に置いて左の規約を厳守してください」とし、「使用時間は午前六時三十分から午後十時まで、急用、水の入用の際はこの限りにあらず」などと書かれている。
約20年前、すぐそばに電柱建設の話が出た際は、住民らが「井戸水が枯れる」として反対し、守ってきた。現在の「井戸仲間」は6人で、井戸端会議ならぬ世間話に花も咲いて、楽しい日々を過ごす。平井美子さんは「ふだんは自宅の上水道を使っていますが、毎日1回は、必ずここに来ます。洗濯機で洗った衣類をすすいだり、野菜類をあらったり…」と明るく笑う。
古井戸のすぐ前に住む西口弘子さんは「表の花壇の花に水をやり、夏場は打ち水をして涼みます」と便利さを説明。また、和田道子さんは「この井戸水は、かれたことがありません。大地震が起きても、飲料水に使えるから、平気です。ただ、その際、電動式ポンプは止まるでしょう。手で汲み上げればすむ話ですが、手動式ポンプも取り付けておこうかと、皆さんと相談しているのですよ」と語った。