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元旦待つ龍の大絵馬~高野口・パイルコラージュ

はあはあ言いながら、神社の石段を登りつめて、回れ右をすると、遥かに高野山系の山並み、眼下に紀ノ川流域の家々が広がっている。ここは和歌山県橋本市高野口町の庚申(こうしん)山にある高野口八幡神社である。
毎年12月、高野口商工同友会が、日本一の特産・パイル織物で作った干支絵馬(えとえま)を、同神社に奉納している。今年の作品は…と〝師走の空気〟を感じたくて訪れた。
すでに拝殿に飾られた絵馬は、幅約3メートル、高さ約2メートルはあろうか。「開運」「平成二十四年壬辰」と記し、稲妻を発する雲龍の図柄のパイルコラージュで制作されている。例年のことながら、その干支絵馬は、今年も、もうわずかであることを尽々と感じさせた。
参道の長い石段の両側には、南天の実が真っ赤に色づき、いきなり、ひよどりがピーッ、ピーッと鳴いて飛び立つ。庚申山は「桜の山」として名高いが、今は全山裸木となり、下草はきれてに刈り取られていた。
その昔,高野口町は織物の町として繁栄。町内には〝長者〟がわんさといて、春爛漫(らんまん)の頃は、大阪ミナミの綺麗どころが人力車で運ばれる。庚申山では酒宴を張り、三味線が鳴り止まなかったという。
これは、高野口町内に住むご年配の友人から、教えてもらっていた話。ふと、そんな往時の光景が、頭をよぎった後、眼下を展望すると、JR和歌山線・高野口駅や葛城館、前田邸、旧町役場周辺の町並みが広がっている。
耳を済ますと、かすかに金槌(かなづち)で何かを叩く音、缶や瓶のぶつかる音、車の走る音などが、ここまで届いてくる。まるで、華やかな昔話など、なかったかのように、平成も、23年末の厳しい空気が流れている。
神社の裏にまわると、今年正月に掲げられた、約80枚の古い絵馬が、からんからんと風に鳴っている。「健康でやさしい子に育ってね」などと、心を込めた願い事が記されていた。
私は会社員でも、職人でも、農林、商工業者でもない。この年の瀬にあたり、「自分にできることは何か」と考えると、やはり当地方の恵まれた大自然の紹介や、素敵な人々の発掘・発信を続けることしかないのかも知れない。
高見より年の瀬のまち見てをりぬ(水津順風)
写真(上)はパイル織物で制作され高野口八幡神社に奉納された龍の大絵馬(中)は高野口八幡神社から眺めた高野口町の風景(下)は高野口八幡神社の参道石段わきに色づいた実南天


更新日:2011年12月30日 金曜日 01:04

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