来てみれば、やはり、銀杏(いちょう)と山茶花(さざんか)と榧(かや)の、3本の老樹がどっしりと立っていた。和歌山県かつらぎ町堀越の「紀州堀越癪(しゃく)観音」の境内。銀杏は樹齢400~600年、山茶花は200年以上と推定され、銀杏は本堂の前、山茶花はその東側、榧は庫裏(くり)の前にある。 この地方は… 続きを読む
橋本の「浮世小路」とは、和歌山県橋本市東家地区の一隅をいう。1960年(昭和35)ごろ、地元の実力者が、老朽化した学校校舎を活用しようと、解体して廃材を使い、そのままの形で、東家地区の路地裏に移設した。木造2階建て瓦葺の2棟。その2棟は、約5メートルの間隔をおいて、路地わきに1列に並べられた。 路地… 続きを読む
急坂をのぼると、松林の中に、木造瓦葺2階建ての家が見えてきた。松林の中の、去年の下草は、全部刈られている。今は、そのあちこちに春草が萌え、幾つもの松毬(まつかさ)がころがっている。松葉の緑、松の幹の亀甲模様、松毬の数…。その、やや冷たい空気をやわらげるように、桜の古木に花が開きはじめていた。「ホー、ホ… 続きを読む
湯舟の中から、湯舟の外を見ると、壁の鏡に向かう男4人の、背中が見える。右端の男は、顎(あご)を泡まみれにして、髭剃りに夢中。次の男は、シャワーで髪を洗い、ついでに、がらがらと嗽(うがい)。次は、ふぐりの見えるほど、腰を浮かし、前から尻にかけて、石鹸タオルで清掃中。左端の男は、歯を磨きながら、こっくり、… 続きを読む
林道を行くと、いきなり雉(きじ)が飛び立った。その驚いたような羽音が、しだいに飛び去った後、木々の茂みの下のほうから、水の音が聞こえてきた。和歌山と奈良の県境を流れる「落合川」だ。 落ち葉が積もり茶色くなった「万葉古道」を下りる。川はうっそうと木立に覆われ、両岸から岩肌が見えている。水かさは、昨夜来… 続きを読む