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野鳥と花の森に古民家♪彦谷峠・上辻さん「無心に」
野鳥の声があふれ、大木の茂みに囲まれた、夢のような古民家が、和歌山県橋本市彦谷峠の紀伊山中にある。今は奈良県五條市に住む男性・上辻明美(うえつじ・あけみ)さん(67)の生まれ育った山家(やまが)で、上辻さんは「この山中にいるときが一番幸せです」と楽しく深呼吸している。
家は明治初期の建築風で、茅葺(かやぶき=トタン包み)屋根の木造平屋。すぐ隣には約15年前、上辻さんが建造したツリーハウス(囲炉裏付き)がある。山上の水槽には湧水(わきみず)を溜め、家も表も、蛇口(じゃぐち)を開ければ、天然水が噴き出す仕組み。
周囲には猪囲(ししがこ)いした、約650平方メートルの畑があり、ユズ、スダチ、カボスなどを栽培。とくに圧巻なのはナラ、カシ、サクラの木を使ったシイタケの原木栽培で、菌が打ち込まれた原木がずらり並ぶ。
家の南側には、防火林として、約10本の藪椿(やぶつばき)の古木が立ち、家全体は防風林として、杉の大木で覆われている。
近くの木の枝の3か所には、上辻さん手作りの鳥の巣箱が掛けられ、ヤマガラがしきりに出入り。ウグイスなどともに、鳴き競っている。谷川にはシラサギやアオサギが川魚をあさっているという。
4月上旬、親しくしている「玉川愛好会」の上西進(うえにし・すすむ)会長が訪れた際は、枝垂桜(しだれざくら)も藪椿も満開で、山麓にはない紀伊山地の楽園情緒が満ちあふれていた。
上辻さんは、若い頃は製材所で働き、退職後の今は、この山家に通って、シイタケ栽培や畑仕事に汗を流し、収穫物は家族で味わったり、友人にプレゼントしたり。
毎年、春と秋の2回は、上西会長ら親しい仲間約10人がツリーハウスで囲炉裏のまわりに座り、焼肉パーティーを開く。摘みたてのシイタケは、筆舌に及び難い「香ばしい味がする」という。
ここは玉川峡の温泉宿泊施設「やどり温泉いやしの湯」の北方の山頂付近。軽四輪自動車でも、対向できない、走り辛い道を登りきったところ。市街地から車で訪れる人は皆無、いや無理といっていい。
上辻さんは「この静かな自然環境が、大好きなんです。ここで畑仕事でもしていれば、それこそ天国、無心になれますよ」とにこにこ。
上西会長は「ここは、玉川峡周辺でも、自慢の別天地です。橋本には、こんなに素敵な、暮らしの場のあることも、知っていただきたいです」と話していた。
写真(上)は上辻さんのツリーハウスで語り合う上西会長=右=と上辻さん。写真(中)は猪囲いしてシイタケ原木栽培する上辻さん。写真(下)は上辻さん宅=右側の木陰=の庭に咲く満開の桜。